メロスは激怒した。 坂津も激怒した。 必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃの王を除かなければならぬと決意した。 必ず、この屋外焼肉バーベキューの幹事を説得せねばならぬと決意した。 「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」暴君ディオニスは静かに、けれども威厳以もをって問いつめた。 「この買い物リストに何を加えるつもりであったか。言え!」幹事は静かに、坂津を問い詰めた。 「市を暴君の手から救うのだ。」とメロスは悪びれずに答えた。 「飲み物がビールだけなので、ビールを減らして焼酎を足すのだ。」と坂津は悪びれずに答えた。 「おまえだって、いまに、磔はりつけになってから、泣いて詫わびたって聞かぬぞ。」 「そんなことをすればお前、当日ビールが欲しいと嘆いても、やらんぞ」 「ああ、王は悧巧りこうだ。自惚うぬぼれているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」 「あ
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