日本法制史の研究者である小林宏教授によると、法制史の研究の業績は、新しい資料を発見し、それを解釈することから生じるという。そこで、この随筆では、盆踊りの絵の掛け軸(縦24cm、横19cm)を根拠にして、推論を試みる。その掛け軸とは、異端の絵師である岩佐又兵衛勝以(1578-1650年)が描いたといわれるものである。 浮世絵の絵師の伝記を記述した最も古い文献は、太田蜀山人(1794-1832年)が原撰した『浮世絵類考』である。この原典は、その後、1800年に笹屋邦教が「古今大和絵浮世絵の始系」を加え、1802年には山東京伝が追考を記すような形で、何回かの補足をされながら、後世に受け継がれていった。その『浮世絵類考』では、岩佐又兵衛について「按するに是世にいはゆる浮世絵のはしめなるべし」と、書かれていた。つまり、「古今大和絵浮世絵の始系」をたどる文献において、すでに19世紀のはじめには、岩佐又