奇跡的に残された、奈良時代(8世紀)の膨大な紙史料「正倉院文書」が“危機”にある。長期保存や研究のための精巧な複製の製作が、近年の予算縮減のため滞ってしまう可能性があるというのだ。 大仏で知られる東大寺(奈良県)の正倉院といえば、聖武天皇や光明皇后ゆかりの品に加えて、約1300年前にシルクロードを経て日本に伝えられた瑠璃碗やガラス細工など、9000件にも及ぶ宝物が収蔵されていることで有名だ。一方、この正倉院には大量の紙史料が残されていることはあまり知られていない。国立歴史民俗博物館(歴博)の仁藤敦史教授はこう解説する。 「8世紀の古文書がこれだけ大量に残っているというのは世界的にも類を見ない、貴重な史料です。歴博ではこの文書の精巧な複製を作ってきたのですが、近年の予算縮減のあおりを受けて、このままでは続けられない状態になっています」