写真が本格的に発達した19世紀の中頃は、絵画を中心に印象派が勃興した時代でもあります。印象派の作風は写実主義の対極にあるように見えますが、実は、その成り立ちは写真の発明や普及と深い関係があることが指摘されています。写真が普及するまでの歴史的経緯を追いながら、印象派に及ぼした影響について解説します。 写真の発明と普及 現在でこそ写真を撮る際にはレンズがついたカメラを使い、投影された像をフィルムやデジタルメディアに記録することが当たり前になっていますが、「ピンホールカメラ(pinhole camera)」と呼ばれる原始的なカメラにはレンズはついておらず、撮影機能もありませんでした。「ピンホール(pinhole)」とは針の先で開けたような小さな穴のことです。窓のない暗い部屋の壁に小さな穴をあけると、穴から入ってきた光が反対側の壁に像を作り出します。 図:カメラ・オブスキュラ この「ピンホール現象