「大発明をしたんだから,きちんと対価を払いなさい」。日本のプロパテント(特許重視)政策を強くプッシュするある大物知財関係者が,某企業にこう電話をかけてきたという。 その企業は元社員との間で職務発明訴訟の最中にあった。この企業の幹部によれば,その大物知財関係者は「優れた発明こそが日本の製造業を救う」と心底信じており,そのためには研究者・技術者にやる気を起こさせる必要がある。つまりは,金銭で大きく報われたという実例が必要だ。ここは自分が一肌脱いで,大発明で稼いだこの企業を説得し,元社員に対して大きな対価を支払わせようと考えた。それが日本のものづくりのためであり,日本のためなのだ。それを言うために,彼はこの企業に電話をかけてきたという。 2001年のITバブルの崩壊をきっかけに,新興アジアメーカー,特に「世界の工場」と呼ばれた中国の台頭が重なった2003年後半までの間,日本の製造業には重苦しい空