『異なり記念日』(齋藤陽道 著) 耳の聞こえない写真家の齋藤陽道さんが、書き下ろしの著書を刊行した。妻と子供の3人家族で暮らす日常の中、見聞きし、感じたことが率直な言葉で綴られている。 「人生でこんなに長い文章を書いたことがなかったので、正直大変でした(笑)。自分が『聞こえない』ということで、なにが伝わって、なにが伝わらないのかについては、これまでの人生でもずっと考えてきたことです。それが子との生活を通じて具体的な形で整理できました」 ある日、齋藤さんは、ぐずる我が子をあやすために外へ出る。散歩の道すがら、めったに出さない声をつかって子供に語りかけてみる。やがてそれは、自分が聞いたこともなく、これまで一度も歌ったことのない「子守唄」へと変わる。そして齋藤さんは「これが歌か!」と実感する。耳の聞こえる人間には想像するのも難しい「発見」が本書にはあふれている。 「子供からは考えてもみなかった発