なにごとかを(あるいはだれかを)批判する際にホロコーストを引きあいに出したことに対して、「ヒトラー呼ばわりかよ」と反応してしまう人々というのは、基本的にホロコースト研究の新しい展開をふまえてないと考えてよいでしょう。ヒトラーを筆頭として狂信的な反ユダヤ主義に染まった連中がそのイデオロギーに従って大量虐殺をやってのけたのだ、と要約できるようなイメージを抱いているわけです。しかしホロコーストがそうした出来事だったのであれば、欧米の知識人(特に左派知識人)は啓蒙の不徹底を嘆いていればすんだわけです。しかし実際には、ホロコーストは少なくとも一部の欧米知識人には自己懐疑の深刻な契機となったのであり、実証的なホロコースト研究もまたヒトラー一人を、あるいはナチスの指導者層を悪魔化して一丁あがり、といったホロコースト認識を覆してきたわけです。 例えばある時期までかなり一般的であった、親衛隊(SS)とドイツ