雲に遮られていた月が顔を覗かせる。 厚い雲の隙間から覗く一条の光。 それは僅かな光。常人では建物の影を僅かに判別出来る程度であろう。 だが、夜の帳が覆われて、日常から逸脱した世界で過ごす住人達にとって僅かな光源は十分な光。 見る者の眼にはまるでスポットライトの様に舞台を照らす。 間断無く続く、闇を裂く様な金属音の乱舞が響き渡る。 音源は対峙する赤の騎士と青の騎士。 風の如く疾く、炎の様に激しく――――― 常軌を逸する激しい鋼の激突。 両の騎士の得物は己が存在を鼓舞するように互いに激しい火花を散らし合う。 閃光の様に激しい火花が闇を切り裂き、 時折二対の担い手達の姿を闇より浮き彫りにする。 それは海の様に何処までも深い青き衣を纏った騎士。 神代から幾多の血を啜り、真紅に染まった、呪われた血染めの長槍。 それを扱うに足る、引き締まった四肢。 それは黄の外套の下に見える赤色の衣。 獣の皮当てで四