かつてなく便利に、快適になっているはずの現代において、なぜ精神疾患が増え続けているのか。『人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造』(ハヤカワ新書)を上梓した精神科医・熊代亨さんは「先進国の社会や文化や環境が、かつては『普通』とされていた人たちにも精神医療を受けるよう強いているように思える」という――。 アメリカの若者の5人に1人がうつ病 現代社会では精神疾患に罹っている人が増え続け、たとえばニューヨーク市立大学の研究ではアメリカ人の10人に1人、特に若者の5人に1人がうつ病に該当すると発表されています(*1)。 後でも触れますが、精神疾患の有病率は診断基準の変更など、さまざまな要因によって左右されるため、こうした研究結果の解釈には注意が必要です。それでも精神医療を必要とする人が増えている事実は揺るがず、このことから、現代社会への適応になんらかの難しさがあることがうかがわれます。 精神医療の