別れは突然やってくる。 互いに恋い焦がれても、別の道を歩む決断を下すときもある。別れとはそういうものだ。ただ、広島と石井琢朗がともに過ごした時間は、互いにとって幸福であり、充実したものだったに違いない。 '08年シーズン終了後、石井は横浜(DeNA)から広島に移籍した。輝かしい実績を引っさげて来た新天地で、ベテランとして陰でチームを支える役割を見事にこなした。 「カープを強くしたい」 その一心だった。 広島の選手として叶わなかったクライマックスシリーズ(以下CS)出場は、コーチに就任して達成した。 石井が来て、広島打線は生まれ変わった。 「カープを強くしたい」という思いはいつしか、「カープは強くなる」という確信に変わっていた。 守備走塁コーチとして、走塁改革にも着手し、菊池涼介を日本一の二塁手に育て同学年の田中広輔との二遊間コンビの下地をつくった。 そして'15年シーズン終了後に就任した打