東京五輪組織委員会の会長が“女性蔑視”発言で辞任したり、開会式の演出を担当したミュージシャンや演出家が過去の「差別」問題で辞退・解任された出来事で、日本でも「キャンセルカルチャー」という言葉が広く知られるようになった。 キャンセルカルチャーに確立された定義があるわけではないが、ここでは「社会正義に反する言動をした者に対し、法的な手段ではなく、SNSなどを使った大衆行動(バッシング)によって、社会的地位をキャンセル(抹消)する運動」としよう。こうしたキャンセルを先導する者は、揶揄を込めて、「ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー(SJW:社会正義の戦士)」と呼ばれる。 アメリカの大学では、社会正義を掲げる学生たちによる過激なキャンセルが常態化しており、それが学問や言論の自由を傷つけ、社会に深刻な害悪を与えている――そう警告するのが、ジョナサン・ハイトとグレッグ・ルキアノフの『傷つきやすいアメリ