『帝国の慰安婦』を特徴づけているのは「日本に対し『法的責任』を問いたくても、その根拠となる『法』自体が存在しない」(319ページ)という認識である。この認識は本書の各所で繰り返されている。「〔慰安婦の〕需要を生み出した日本という国家の行為は、批判はできても『法的責任』を問うのは難しい」(46ページ)、「強姦や暴行とは異なるシステムだった『慰安』を犯罪視するのは、少なくとも法的には不可能である」(172ページ)、「日本国家に責任があるとすれば、〔人身売買を〕公的には禁止しながら実質的には(個別に解放したケースがあっても)黙認した(といっても、すべて人身売買であるわけではないので、その責任も人身売買された者に関してのことに限られるだろうし、軍上層部がそうしたケースもあることを認知していたかどうかの確認も必要だろう)ことにある」(180ページ)、「『慰安』というシステムが、根本的には女性の人権に