ジェリー・Z.ミュラー『測りすぎ:なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』松本裕訳, みすず書房, 2019. 定量評価の戒め本。統計学の細かい話ではなく、数値評価の導入によってメンバーの行動が歪められてしまうケースを集めて紹介している。ただし、数値評価全般が批判されているというわけではなく、組織の目標達成が損なわれるような、誤ったインセンティヴを与える数値評価を止めよう、という限定された主張を行っている。原書はThe Tyranny of Metrics (Princeton University Press, 2018.)で、著者の専門は歴史(経済史)である。 定量的評価の失敗例は、大学、学校、医療、警察、軍、ビジネス、慈善などの領域からとられている。手術の成功数で医者の報酬が決まるならば、医者は手術して治る見込みのある患者を優先し、状態の悪い患者を引き受けなくなる。重犯罪の発生数で警