「不調」を経験した里親の後悔 2007年に里親登録をした東京都内で暮らす藤井康弘さん(60)は、これまで長期と短期合わせて13人の子どもを迎え入れてきた。10数年にわたる里親だが、今でも最初に迎え入れた子どものことを思い出すと涙が出てくる。 「『不調』として4カ月で施設にお返しすることになってしまいました。今思い返せば十分な対応ができませんでした」 藤井さんは登録当時、厚生労働省家庭福祉課長であり、親と暮らせない子どもの社会的養護に関する施策を立案・実施する担当者の立場でもあった。もともと藤井さんの家族は、東京都が独自に行っていたファミリーサポート制度による子どもを一時的に受け入れた経験があったうえ、妻が里親に関心を持ち、藤井さん自身も一家庭でも里親が増えること、そして政策の担当者として自分の足元に福祉の現場を持てることは良いことだと考えたからだった。 「妻もつらかったと思います。私も妻も