序 「地球は人間の条件の本体そのものであり、おそらく、人間が努力もせず人工的装置もなしに動き、呼吸のできる住家であるという点で、宇宙でただ一つのものであろう。」アレントは『人間の条件』のプロローグにおいてそう述べ、さらに、「たとえば、想像する限りで人間の条件の最も根本的変化というのは、人間が地球から他の遊星に移住することであろう。まったく不可能であるとは言えなくなったこの出来事は、人間が、地球の提供する条件とは根本的に異なった人工の条件のもとで生きなければならないということを意味するであろう。そうなれば、労働も仕事も活動も、そして実際私たちが理解しているような思考さえ、もはや意味を持たなくなるだろう。と、記している。 現実には、我々人類は未だその人間の「根本的変化」を経た姿にめぐりあったことはないし、アレントが「人間は今も、おそらくは将来も、地球の条件の下に生きるであろう」というように