音楽について語り合う。そんなこと、久しくやっていない。そもそも、他人に「好きな音楽は何?」とたずねることすら、プライベートを詮索(せんさく)するようで、どうにも、躊躇(ちゅうちょ)してしまうのだ。 音楽を語るといえば、音楽批評の記事も、目にする機会が減った。レコード会社やミュージシャンに忖度(そんたく)せず、作品や音楽作品を価値付けする営みは、ひょっとして絶滅危惧種なのだろうか。 いま、音楽を取り巻く言説の構造が大きく変わっている――。そう語るのは、ポピュラー音楽研究者で、大阪公立大学の増田聡教授だ。音楽語りの現在地について、聞いた。(聞き手・河村能宏) ――ドラマや映画を見て、友達や同僚とあれこれ『良い/悪い』を語ることはあるんですが、音楽においては、「誰かと語り合いたい!」と思えなくなっている自分がいます 「ポップミュージックについては、音楽の量が増えすぎてしまいましたからね。ラウドロ