思い出トランプ (新潮文庫) 作者: 向田邦子出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1983/05メディア: 文庫購入: 9人 クリック: 82回この商品を含むブログ (125件) を見る 向田邦子の「だらだら坂」は『思い出トランプ』*1所収の短篇の中でもちょっと異色ではある。妾*2を囲う中年男の話であるという点で。 ところで、主人公の「庄治」は「死んだ父親」を思い出しつつ唐突に「崔承喜」という朝鮮人の舞踊家を想起する; (前略)店の奥に小さな鏡があって、待っている庄治の顔がうつっている。 死んだ父親にそっくりである。 (略) あれは庄治が小学校五年生のときだった。 叩き大工をしていた父親に連れられて、 崔承喜*3という朝鮮の舞姫の踊りを見にいったことがあった。 どうして、父がそんな切符を持っていたのか、誰かに貰ったのか、そんなことより覚えているのは、末の妹をみごもっておながか大きかった母親