日本人の死亡原因で最も多いがん。そのがんの研究でトップを走ってきた研究者がきょう(29日)、日本を離れ研究の拠点を海外に移す。政府の担当者を兼務して新薬の開発に取り組んできたがん研究のリーダーが離日を決断した背景には、今の環境では患者のための研究が立ちゆかなくなるという危機感があった。 (取材:科学文化部 籔内潤也記者) 先週、東京大学医科学研究所で1人の研究者が引っ越しの準備をしていた。「17年、東大にいる訳で、17年分を全部整理するというのは結構大変で・・」と話す、中村祐輔教授。 中村教授がこれまでに発表した論文は約1200本。がんに関係する未知の遺伝子などを次々に発見し、著名な雑誌への論文の掲載数は日本人では群を抜く多さだ。 これが中村教授の研究を元に開発中の、がんの一種、滑膜肉腫の治療薬。研究論文の発表から10年。滑膜肉腫で初めての治療薬となる可能性があるが、薬の開発には巨額の