タグ

ブックマーク / saebou.hatenablog.com (11)

  • 台本はよく出来ているが、個人的に非常にいけ好かない映画だと思った~『アルプススタンドのはしの方』 - Commentarius Saevus

    『アルプススタンドのはしの方』を見てきた。高校演劇で賞をとった戯曲の映画化である。元の舞台は未見である。 www.youtube.com もともとが高校演劇の戯曲ということで、短い作品だ。演劇部のあすは(小野莉奈)とひかる(西まりん)、元野球部の藤野(平井亜門)、優等生の宮下(中村守里)を中心に、高校野球の観戦をしながらいろいろな人間関係が浮き彫りになっていくというような会話劇である。試合の様子は一切映らず、この4人と数名の他の生徒や教員のやりとりだけで展開する。 非常によくできた台で、演技などもしっかりしてまとまりのある映画なのだが、私は個人的な趣味として全く好きになれなかった。というのも、この作品は高校生が強制的に高校野球を見に行かされることを「良いこと」として正当化する話だからである。あすはとひかるは全く高校野球に興味がないのに学校の命令で観戦させられており、最初の部分ではそうし

    台本はよく出来ているが、個人的に非常にいけ好かない映画だと思った~『アルプススタンドのはしの方』 - Commentarius Saevus
    chateaudif
    chateaudif 2020/09/17
    すでに充分な特権を得ているのに、周辺まで取り込まずにはいられない「甲子園」の権威。まさしく鼻持ちならない映画だった。
  • 「運命の男」とハードボイルドヒロインの誕生~『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』を見た。言わずと知れたルイーザ・メイ・オルコットの有名作の映画化なのだが、まあセンスのない日語タイトルがついている。グレタ・ガーウィグ監督作である。 www.youtube.com お話は『若草物語』に忠実でありつつ、かなり変えている…というか、みんなが疑問に思いがちなジョー(サーシャ・ローナン)の結婚について、メタフィクション的なものすごくひねったオープンなエンディングを用意している。さらに時系列を乱した編集になっており、最初はなんか「え、もうローリーふられた後なの!?」みたいなところから始まってちょっと面らったのだが、だんだん少女時代と現在の似たような体験が併置され、それがジョーの頭の中で物語になっていくプロセスを示すためにこういう構造になっていることがわかってくる。これは脚色としては大変凝ったうまいやり方で、古典の再構成としてはお

    「運命の男」とハードボイルドヒロインの誕生~『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
    chateaudif
    chateaudif 2020/06/24
     ジョー「私たちにはいつでも第一部がある」だな。清々しいな……。
  • 連帯する女たちと中年男の危機〜『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を見てきた。1973年に行われた、元男子テニスチャンピオンである55歳のボビー・リッグズ(スティーヴ・カレル)と、29歳で女子テニスのトッププレイヤーだったビリー・ジーン・キング(エマ・ストーン)の「男女の戦い」(Battle of the Sexes)を描くものである。ここでビリー・ジーンが勝利したことは、女子テニスの発展にも女性解放運動にも大きな影響があったそうだ。 この映画が大変面白いのは、真の「悪役」がボビー・リッグズではないということだ。女子テニスの賞金が低すぎるため独自に女子テニスの協会を立ち上げ、女性アスリートのために尽力する健気なビリーに対して、性差別的な大口を叩き続け、メディアの前で挑発を繰り返すボビーはとても好人物とは言えない。しかしながらこの映画では、ボビーは既に試合をする前から人生においてはビリーに大負けしている。 ビリーはテニス界に

    連帯する女たちと中年男の危機〜『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • 二級市民には意見を伝える手段すらない〜『サフラジェット』(『未来を花束にして』) - Commentarius Saevus

    『サフラジェット』(『未来を花束にして』というタイトルだが、全く酷い日語タイトルである)を見てきた。1912年のロンドンを舞台に、洗濯工場でクズ上司のセクシャルハラスメントに苦しみながら働くモード(キャリー・マリガン)が女性参政権運動に参加するようになり、サフラジェットの闘士として戦う様子を描いた作品である。 全体としては、これまでミドルクラス以上の活動家が注目されがちだった女性参政権運動について、ワーキングクラスの女性たちに焦点をあてる近年の研究成果を反映した作品になっている(これについてはCarol Dyhouse, Girl Trouble: Panic and Progress in the History of Young Womenのレビューでちょっと触れたことがある)。サフラジェットというのはこの映画にも出てきたWSPUのメンバーを中心とする戦闘的な女性参政権活動家のことで

    二級市民には意見を伝える手段すらない〜『サフラジェット』(『未来を花束にして』) - Commentarius Saevus
  • 2016年映画ベスト10 - Commentarius Saevus

    去年は94映画を見たらしい(家でDVDで見たものは除く)。ということで、ベスト10を。 1.『裸足の季節』 抑圧をはねのける生き生きした子どもたち〜『裸足の季節』(ネタバレあり) トルコの幼い姉妹が自由を求めて逃走する様子を生き生きと描いた映画だった。子役の演技もいい。 裸足の季節 [DVD]posted with amazlet at 16.12.31ポニーキャニオン (2016-12-21) 売り上げランキング: 17,764 Amazon.co.jpで詳細を見る 2.『キャロル』 画面の全てが女の心を映す〜『キャロル』(ネタバレあり) とにかく緻密な恋愛モノ。役者のしゃべり方から身のこなし、服装やインテリア、画面の隅々まで気を配って作った作品。 キャロル [DVD]posted with amazlet at 16.12.31KADOKAWA / 角川書店 (2016-08-26)

    2016年映画ベスト10 - Commentarius Saevus
  • 老師と弟子、そしてその限界〜『マイ・インターン』 - Commentarius Saevus

    ナンシー・マイヤーズ監督の新作『マイ・インターン』を見てきた。 ヒロインは若き女性経営者ジュールズ(アン・ハサウェイ)。キッチンで始めたアパレル会社が1年半で従業人200名を超える一大事業に発展し、夫のマットは仕事を辞めて幼い娘ペイジを育てることに。大きくなりすぎた会社に外部からCEOを呼ぶかどうか検討しているところに、高齢者再雇用の社会貢献事業の一環として高齢者インターンのベン(ロバート・デ・ニーロ)が入社してくる。最初は社長付のベンとあまりうまくいかなかったジュールズだが、経験豊富でジュールズを全面的にバックアップしてくれるベンとの間にだんだん強い友情の絆ができて… 軽い気持ちで見ても楽しめるオシャレな職場コメディだが、割合フェミニズム的な問題意識に基づいて作られた作品である。ベクデル・テストはパスするし、ジュールズが働く母親として受ける差別を嘆いたりするところはもちろん、最後にとる選

    老師と弟子、そしてその限界〜『マイ・インターン』 - Commentarius Saevus
    chateaudif
    chateaudif 2015/10/19
    『ベストキッド4』を思い出したな。
  • 悪趣味を正しく狙って正しく撃ち落とす、が…『キングスマン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus

    マシュー・ヴォーン監督、『キングスマン』を見た。 舞台はイギリス。エージェント組織、「キングズマン」のメンバーが亡くなり、新しいメンバーをリクルートすることになった。ふだんはサヴィル・ロウの仕立屋のフリをしているコードネーム「ガラハッド」ことハリー(コリン・ファース)は、ちょっとしたトラブルをきっかけに亡くなったかつての戦友の息子ですっかりグレているエグジー(タロン・エガートン)をスカウトし、教育しようとするが… 上に書いたあらすじのさわりからわかるように、この映画はスパイ版『ピグマリオン』みたいな話で、作中に『マイ・フェア・レディ』へのオマージュ的言及もある。ヒギンズ教授に相当するのがハリーで、エグジーがイライザなのだが、エグジーはイライザみたいな上昇志向のあるワーキングクラスというわけではなく、公営住宅に住んでいて義父に虐待されているアンダークラス(UKでよく話題になっている、福祉に頼

    悪趣味を正しく狙って正しく撃ち落とす、が…『キングスマン』(ネタバレあり) - Commentarius Saevus
  • フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編 - Commentarius Saevus

    最近炎上していたこのまとめがとにかくひどい。 「クソフェミ「まずはを読め!」俺ら「どのを?」のテンプレに答える当にフェミニズムが学べる5冊の」 とりあえずこのまとめのひどさはいくつもあるのだが、 ・タイトルに「クソフェミ」というのが入っている時点で、フェミニズムを侮蔑する気が全身から汗のようににじみ出ている。真面目に謙虚さと疑いを持って学ぶ気はないようだ。 ・そもそもフェミニストが「まずはを読め」というのをテンプレ的に言ってくるという状況があまり想像できないが、それはともかくとして他の専門分野で妙なことを言うと「を読んでから言え」と言われるのは当たり前なのに(宇宙、地震や火山、医学、歴史など)なぜフェミニズムだけこんなにウザがられているのか理解できないし、また関心があるという人にをすすめるのは別に普通である。 ・フェミニズムについて知りたいくせにいきなりロールズやセンをすすめ

    フェミニストとしてすすめる、フェミニズムに関心を持つための本5冊(1)物語・ノンフィクション編 - Commentarius Saevus
  • 2014年映画ベスト10 - Commentarius Saevus

    もう今年は映画を見ないと思うので、年のベスト10を。 1. 『ワールズ・エンド/酔っぱらいが世界を救う!』 この映画がサイコーなのは、人間の自由意志という大きなテーマを「近所のパブで酒を飲む」という、身近な生活の平面に引きつけて描いているところである。またまた、酒が全く飲めない人でも「酒を飲むとどんな感じがするのか」ということが手にとるようにわかる描写がなされているという点で、下戸的に高評価だ。 ワールズ・エンド/酔っぱらいが世界を救う! [DVD]posted with amazlet at 14.12.24NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン (2014-10-08) 売り上げランキング: 8,228 Amazon.co.jpで詳細を見る 2. 『ベル―ある伯爵令嬢の恋―』 気品のある歴史ものに人種差別とフェミニズムを盛り込んだ、とんがったヘリテージ映画。こんなにゴージャス

    2014年映画ベスト10 - Commentarius Saevus
  • 美化しすぎ、お姫様万歳もの〜『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』 - Commentarius Saevus

    『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』は、ニコール・キッドマンがモナコ公妃になったグレース・ケリーの半生を演じるという伝記ものである。 これ、前評判がむちゃくちゃ悪いのでどれほどひどいかと思ったら、まあニコール・キッドマンの存在感や、ゴージャスな衣装、キレイな景色もあってヴィジュアル的には一応最後まで見ていられる程度の出来…ではあったと思う。ただ、演出にも脚にも(とくに脚に)かなり問題があって、はっきり言ってつまらない。 内容としては、レーニエ大公と結婚したグレースが、長年の協働者であるヒッチコックの誘いで映画に戻ろうと悩みつつ、結局は危機に陥ったモナコを救うため公妃としての公務を選び、夫を助けてモナコの政情不安解消に尽力するというものである。 これはあまり史実には基づいておらず、グレース公妃を美化しすぎだという批判が強くあるらしい。これは全くそのとおりで、同じくヒロインとその家族を

    美化しすぎ、お姫様万歳もの〜『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』 - Commentarius Saevus
    chateaudif
    chateaudif 2014/09/23
    『ダイアナ』も地雷やったしな……。
  • フェミニストっぽい映画を作ろうとして失敗したロマコメ〜『ドン・ジョン』 - Commentarius Saevus

    ジョゼフ・ゴードン=レヴィットの初監督作『ドン・ジョン』を見た。オンラインポルノ中毒の現代のドン・ファンことジョン(イタリア系のカトリックの青年)が真実の愛を見つけるまでの遍歴…といえばいいのかな? …これ、明確にフェミニスト的意図を持って作られた映画だそうで、ポルノグラフィの扱い方とかドン・ファンの再解釈とか、見ていると「たぶんフェミニストっぽい発想で作ろうとしたんだろうな…」とわかるのだが、決定的に失敗してると思う。そりゃそこらのロマコメ(ジャド・アパトーとか?)に比べりゃフェミニスト的かもしれんが、あのセクシーで頭もいいジョゼフがフェミニスト映画を作りますって言ってでてきたのがこれかぁ…という期待外れ感が大きい。 期待外れだったという人は私以外にも結構いるようなのだが、一番私が引っかかったのは、スカーレット・ジョハンソンの役にものすごいミソジニーを感じたということである。上のリンク先

    フェミニストっぽい映画を作ろうとして失敗したロマコメ〜『ドン・ジョン』 - Commentarius Saevus
    chateaudif
    chateaudif 2014/04/10
    えーっ、フェミニストのつもりなら大失敗だよな。童貞映画の変形という印象。
  • 1