--宗教も革命思想も、「システムの悪」を発動し得るという面は共通する。 「今の社会では非寛容性、例えば宗教的な原理主義や、旧ユーゴスラビアのようなリージョナリズム(地域主義)が問題になっています。昔は共産主義対資本主義とか、植民地主義対反植民地主義といった大きな枠組みでの対立だったのが、だんだんリージョナルなもの、分派的なものになって、それが全体を見通すことが困難な混沌とした状態を生み出しています」 --『1Q84』に、破壊的な力を持つ「リトル・ピープル」という不思議な存在が現れる。 「リトル・ピープルがどういうものか、善か悪か、それは分からないけれど、ある場合には悪(あ)しき物語を作り出す力を持つものです。深い森の中にいるリトル・ピープルは善悪を超えていると思うけれども、森から出てきて人々にかかわることによって、ある場合には負のパワーを持つのかもしれません」 --とはいえ、善悪や価値観の