タグ

ブックマーク / realsound.jp (9)

  • 物事の二面性と中間性を体現する『スリー・ビルボード』の衝撃

    「なんだ、これは…」『スリー・ビルボード』を鑑賞中に、思わず何度もつぶやいてしまった。予想を裏切り続ける衝撃的な展開の連続に、この映画を観ている間じゅう呆気にとられるのだ。このように、多くの観客に新鮮な驚きを与え、アメリカ国内外で多数の賞を受賞し、アカデミー賞有力候補にもなった作、『スリー・ビルボード』が与える衝撃がどこからくるのか、ここではその理由をできるだけ深く考察していきたい。 物語の始まりは、むしろシンプルで地味過ぎるほどだ。アメリカ、ミズーリ州の田舎町で、自分の娘を何者かにむごたらしく殺害された女性ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、進展を見せない地元警察の捜査に苛立ちを感じ、車が通る道に3枚の大きな広告看板(スリー・ビルボード)を出した。その内容は、事件を未だ解決できていない警察署長を名指しで批判するというものだった。そのウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)は、ミル

    物事の二面性と中間性を体現する『スリー・ビルボード』の衝撃
  • 物事の二面性と中間性を体現する『スリー・ビルボード』の衝撃

    「なんだ、これは…」『スリー・ビルボード』を鑑賞中に、思わず何度もつぶやいてしまった。予想を裏切り続ける衝撃的な展開の連続に、この映画を観ている間じゅう呆気にとられるのだ。このように、多くの観客に新鮮な驚きを与え、アメリカ国内外で多数の賞を受賞し、アカデミー賞有力候補にもなった作、『スリー・ビルボード』が与える衝撃がどこからくるのか、ここではその理由をできるだけ深く考察していきたい。 物語の始まりは、むしろシンプルで地味過ぎるほどだ。アメリカ、ミズーリ州の田舎町で、自分の娘を何者かにむごたらしく殺害された女性ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、進展を見せない地元警察の捜査に苛立ちを感じ、車が通る道に3枚の大きな広告看板(スリー・ビルボード)を出した。その内容は、事件を未だ解決できていない警察署長を名指しで批判するというものだった。そのウィロビー署長(ウディ・ハレルソン)は、ミル

    物事の二面性と中間性を体現する『スリー・ビルボード』の衝撃
  • 菊地成孔の『ラ・ラ・ランド』評:世界中を敵に回す覚悟で平然と言うが、こんなもん全然大したことないね

    *以下のテキストは、 マスメディアがアカデミー賞レースの報道を一斉に始める前の、2月20日に入稿、更に4日前に書かれたもので、つまり所謂 「あとだしジャンケン」ではない旨、冒頭に強調しておく。 今時これほど手放しで褒められてる映画があるだろうか? 当連載は、英語圏の作品を扱わないので今回は<特別編>となる。筆者は映画評論家として3流だと思うが、作は、複数のメディアから批評の依頼があった。大人気である。「全く褒められませんよ」「こんな映画にヒーヒー言ってるバカにいやがられるだけの原稿しか書けませんけど」と固辞しても、どうしても書けという。 そりゃあそうだ。筆者は一度だけヤフーニュースのトップページに名前が出たことがある。ジャズの名門インパルス!レーベルと、米国人以外で初めて契約したから? 違う。女優の菊地凛子を歌手デビューさせたから? 違う。正解は「『セッション』を自分のブログで酷評したか

    菊地成孔の『ラ・ラ・ランド』評:世界中を敵に回す覚悟で平然と言うが、こんなもん全然大したことないね
  • 年末企画:小野寺系の「2015年 年間ベスト映画TOP10」

    1. への家路 2. マジック・イン・ムーンライト 3. 毛皮のヴィーナス 4. マッドマックス 怒りのデス・ロード 5. バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) 6. GONIN サーガ 7. 雪の轍 8. キングスマン 9. 母と暮せば 10. 神々のたそがれ コントロールされる大衆、迫害されるマイノリティ。政治や宗教や偏見や差別や資家や暴力が一度に追走してくる地獄と、その「反撃」を描いた『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、まさに2015年を代表する「現代の映画」であり、セリフに頼らない雄弁な映像は、サイレント映画をリスペクトした、映画の根源的感動にあふれています。私が映画を観ていて、「すごい!」と思わされるのは、世の中や自分の持っている既存の価値観をひっくり返すような力を感じた瞬間で、その源泉には、映像分野を開拓し改革する「新しさ」と、表面的なトレンドに惑わされ

    年末企画:小野寺系の「2015年 年間ベスト映画TOP10」
  • きのこ帝国・佐藤が明かす、音楽家としての”根っこ”「誰かと出会いたい一心で音楽をやっている」

    きのこ帝国が4月29日にメジャー1stシングル『桜が咲く前に』をリリースした。今回、ボーカル/ギターの佐藤千亜妃に行なったインタビューによると、叙情的で美しいメロディを持つ表題曲は、前シングル『東京』で描いた風景から10年前にさかのぼり、バンドの初心に帰るような気持ちで書かれた曲であるという。さらに佐藤は、バンドの「根っこの部分」と「変化してきた部分」を、自身の音楽観を交えて語ってくれた。 「『桜が咲く前に』みたいな曲を出すのは自分としては攻めの姿勢」 ——「桜が咲く前に」はノスタルジックなミディアム・ナンバーで驚きました。一方でサウンドは、うなるギターにしてもきのこ帝国らしいです。この曲をメジャー・デビュー・シングルに選んだ理由は? 佐藤千亜妃(以下、佐藤):「選んだ」と言われると難しいんですけど、去年リリースした「東京」から10年前にさかのぼって、バンドが初心に帰る気持ちで書いた曲です

    きのこ帝国・佐藤が明かす、音楽家としての”根っこ”「誰かと出会いたい一心で音楽をやっている」
  • クラムボン・ミトが語る、バンド活動への危機意識「楽曲の強度を上げないと戦えない」

    ミトは、ある種のランナーズ・ハイの状態にあるのかもしれない、と思った。こちらの質問に対して、そんなこともわからないのかと言わんばかりに呆れたような表情を見せながら、畳みかけるように饒舌に語り続ける。その話はある種の衝撃だった。 クラムボンが結成20周年を迎え、5年ぶりのアルバム『triology』をリリースする。9枚目のアルバム。彼らのバンドとしての個性もスタンスもすっかり確立されているはずなのに、しかし、このアルバムは、これまでの作品とはまったく違う意識で作られているようだ。何度も取材して気心が知れているはずのミトの変貌は、いつもと同じつもりで呑気にインタビューしにいった僕を戸惑わせるには十分だった。 彼と話していて思い出したのは、約20数年前、テクノにはまったころの自分。耳が変わり、意識が変わり、聴くものもすべてが変わって、それまで聞いていた旧来のロックみたいなものがすべて聞けなくなっ

    クラムボン・ミトが語る、バンド活動への危機意識「楽曲の強度を上げないと戦えない」
  • 細野晴臣が“音楽の謎”を語る「説明できない衝撃を受けると、やってみたいと思う」

    世界各地の土地柄と音楽について語り尽くした新著『HOSONO百景』(河出書房新社)の刊行を期に行った細野晴臣へのインタビュー後編。1940年代音楽の”再発見”など、ポピュラー音楽の豊かな鉱脈について語った前編に続き、後編では自身のキャリアを振り返りつつ、リズムに対する考え方や、音楽における"謎”について含蓄あるトークを展開してもらった。聞き手は小野島大氏。(編集部) 「僕がやってきた時代を通して、ずっと少数派でした」 ――文化の継承という点でいえば、この書にも、今の日音楽家はルーツの意識が薄らいでいるんじゃないかということを述べられてますよね(21P)。異文化を受け入れて自分のものにしていくという過程が欠如してるんじゃないか、と。 細野:まあそれも何にも知らないで言ってる意見なんで、実際はどうなんだか。昨日テレビ見てたら、リトル・リチャードに影響受けたような若いバンド…名前忘れちゃった

    細野晴臣が“音楽の謎”を語る「説明できない衝撃を受けると、やってみたいと思う」
  • メタリカから英BBCまで…ピアニスト上原ひろみに世界のアーティストとメディアが賛辞を送る理由

    ピアニストの上原ひろみが5月21日におよそ2年ぶりとなる待望のアルバム『ALIVE』をリリースする。『VOICE』『MOVE』に続きベースにアンソニー・ジャクソン、ドラムにサイモン・フィリップスというジャズ界の大御所を招いた「ザ・トリオ・プロジェクト」の最新作にあたる作は「生きる」という人生をテーマにした作品に仕上がっているという。 静岡県浜松市のいわゆる「音楽一家」ではない普通の家庭に生まれた上原ひろみ。たまたま始めた習い事のひとつにピアノがあり、6歳から近所の先生からピアノを、また近所のヤマハ音楽教室では歌と作曲を学んだ。当時からハノン(指の動きを覚える練習)は退屈で、ジャズのようにスイングして弾くのが楽しかったという。ピアノの先生の影響からオスカー・ピーターソンやエロル・ガーナーなどのジャズピアノを聴くようになり、小学生の頃の夢は大好きなピアノを毎日弾くことができるピアニスト。その

    メタリカから英BBCまで…ピアニスト上原ひろみに世界のアーティストとメディアが賛辞を送る理由
  • 「狂気みたいなものはずっとついて回る」僧侶となった二階堂和美が“宅録時代”を振り返る

    シンガー・ソングライターの二階堂和美が、11月23日公開のスタジオジブリ最新作『かぐや姫の物語』(高畑勲監督)の主題歌「いのちの記憶」を含む最新アルバム『ジブリと私とかぐや姫』と、自身の音楽観~宗教観までを語るロングインタビュー後編。 前編【「この世はうまくいかないものなんだ」二階堂和美が『かぐや姫の物語』主題歌に込めた思いとは】では、「いのちの記憶」の話を中心に、浄土真宗の僧侶である彼女の死生観にまで話は及んだ。後編では『ジブリと私とかぐや姫』に収録されたほかのオリジナル楽曲の創作プロセスや、自身の作風の変化についても率直に明かした。 『かぐや姫の物語』の子育てシーンにリアリティを感じる ――オリジナル新曲の「私の宝」って曲は、二階堂さん自身の境遇も重ねてしまいますよね。 二階堂和美(以下、二階堂):あははは、重ねますよね! この子(取材は二階堂の娘さん同席でおこなわれた)が生まれて最初

    「狂気みたいなものはずっとついて回る」僧侶となった二階堂和美が“宅録時代”を振り返る
  • 1