この2人の著者は引用文からわかるように、書くこと、出版することによって、読まれていくことに対する強い信念がある。作者と出版社と読者の共同体がまだ確固として存在しているのだ。おそらくイタリアにはまだコルシカ書店のようなトポスが根づいているだろうし、それはスウェーデンでも同様なのではないだろうか。それでなければ、ネットの全盛時代を迎えているにもかかわらず、2人の著者があくまで紙の本という形式に熱く執着し、刊行に至った事情と経緯が理解できないであろう。それに2人の著書が秘めているエネルギーは、紙の本によってのみ十全に感応できるように思われる。 しかし日本では『死都ゴモラ』はまったく話題にもならず、『ミレニアム』の2冊も何とか重版にこぎつけたところのようだ。それはイタリアやスウェーデンにはまだ読者の共同体が存続していることに比べ、日本ではすでに崩壊しているからではないだろうか。『ミレニアム』と『死