吉見俊哉・東大教授が新著 都市論やメディア論を展開してきた社会学者の吉見俊哉・東大教授が『大学とは何か』(岩波新書)を著した。(文化部 植田滋) 12世紀ヨーロッパに誕生した大学は、17、18世紀に「一度死んだ」後、19世紀に復活したが、現代は再び衰退の危機にあるという。 大学は現在、量的に拡大しているものの、質的には危機にある、と吉見教授は見る。増員による学生の質の低下に加え、「ネットメディアの広がりで『知識を囲い込む場』としての価値が失われる一方、大学の発展を支えてきた19世紀以降の『国民国家』の力が後退しつつあるため」だ。 教授によれば、16世紀、印刷革命で出版メディアが爆発的に広がったが、大学はこれを取り込まず、言語もラテン語に固執した。その結果、デカルト、パスカル、ロック、ライプニッツといった近代知の巨人は大学教授以外から生まれ、大学は没落するか貴族の訓育機関になった。この「第一