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期待仮説 プラセボ効果を説明するための仮説として、第2回では「意味付け仮説」を、第3回では「学習仮説」を概観してきました。 今回は「期待仮説」という仮説を見ていきたいと思います。プラセボ効果を説明するための代表的な3つの仮説のうち、これが最後のものになります。 期待仮説の概要 1994年にハーバード大学で開催されたプラセボに関するシンポジウムにおいて、ある研究者が次のように述べたことがあります。 「If you don't believe in them, they don't work.*1」 ここでのthemはプラセボを指しています。つまり上記の発言は「信じなければプラセボ効果は生じない」ということを意味します。 これは「期待仮説」の内容そのものといえます。すなわち「期待仮説」とは、「『この治療には効果がきっとある』という期待(信仰)がプラセボ効果をもたらす」という考え方です。 治療に
古典的条件付けに基づいた学習仮説 プラセボ効果のメカニズムを説明するための3つの仮説のうち、前回は「意味付け仮説」を概観しました。 今回は「学習仮説」という考え方を見ていきたいと思います。この考え方は、「パブロフの犬」で有名な「古典的条件づけ理論」に多くを負っています。そのため始めに、「古典的条件づけ理論」の内容を簡単に説明させていただきます。 古典的条件付け理論とは 極めて大雑把に要約するならば、「古典的条件づけ理論」は下記のように説明することができます。 メトロノームの音を聞かせた後に餌を呈示することを犬に繰り返すと、次第に犬はメトロノームの音に対しても唾液を垂らすようになる*1。 専門用語を用いた場合、「古典的条件づけ理論」は次のように箇条書きで示すことができます。 無条件刺激(Unconditioned Stimulus) = 餌 無条件反応(Unconditioned Respo
プラセボ効果に関する3つの仮説 いよいよ今回から、「プラセボによる鎮静作用」に焦点を絞り、プラセボ効果に関する研究を概観していきます。 プラセボ効果に関するこれまでの研究は、以下の3つの仮説に基づいて行われてきたといえます。 「意味付け仮説」 「学習仮説」 「期待仮説」 これらの3つの代表的な仮説のうち、今回は「意味付け仮説」の内容を詳しく見ていきます。 Beecher博士のアイディア プラセボ効果に関する研究は、「痛み」の領域において開始されたと言っても過言ではないでしょう。 プラセボ効果に関する研究のパイオニアであり、プラセボ効果を研究することの重要性を世に訴えた画期的な論文「強力なプラセボ」*1を著したハーバード大学医学部の麻酔科医Beecher博士こそが、「痛み」の軽減に関する現象に注目してきた人物でした。 おそらくBeecher博士は、麻酔科医という職業柄、「どうすれば患者の痛み
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