Text by 塩谷舞(@ciotan) 「○○中学校の××ってヤツ、全国大会に出たらしいぜ」 と、スタープレイヤーの輝かしい戦績は、隣町の運動部内でもしばしば噂される。近くて遠いスタープレイヤーは、その他大勢のプレーヤーたちから憧れられ、目標にされ、嫉妬される。そして、それはどの界隈でも同じこと。彼は間違いなく、美大界隈のスターだった。 「武蔵美の井口ってヤツ、会社立ち上げたらしいぜ」 そんな情報は、隣町……を遥かに超えて、遠く離れた関西に住む美大生にも伝わった。2008年のことである。私は当時、京都芸大に通う18歳。「武蔵美の井口」は22歳、仲間たちと「TYMOTE(ティモテ)」というクリエイティブカンパニーを立ち上げた。 馬をかぶった覆面集団がTYMOTE。いかにも、美大発のクリエイティブカンパニーらしい風貌である。そして、その中でも個人名でよくメディアにも紹介されていたのが、井口皓