●五種類の言説 平野 僕の場合、デビューが一九九八年で、その頃にネットでかなり嫌な思いをしたことがあるんですね。現実の世界では、ちょっと経験したことがないような罵詈雑言にもさらされたし、事実無根のウソやデマも書かれた。今はもう、ネットのそういう一面も知ってますけど、最初のショックは大きかった。それは僕に限らず、あの当時、社会に名前の出ていた人の多くが経験したんじゃないですかね。僕は、今そのことについてどうこう言うつもりはないんですが、実際のところ、僕自身もネットの恩恵をすごく被っていて、もはやネットに接続できない生活は考えられないところまで来ているにもかかわらず、今でも何処か、梅田さんのようなさわやかな感情をネットの世界に対して持ちきれないのは、一つにはあの時のトラウマがあるんだと思います(笑)。これは僕個人の問題ではなくて、今日までのネットについての日本の言論全体に言えるのかもしれません