米アカデミー賞に作品賞などにノミネートされ話題を呼んでいる、映画『ドライブ・マイ・カー』。じつは同作と、原作である村上春樹『女のいない男たち』の間には、見逃せない相違があると批評家の杉田俊介氏は指摘する。そしてその違いからは、村上春樹作品と「非モテ性」の関係が浮かび上がってくる。 女性の「本心」と対峙できない 以前、濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』について男性学/メンズリブ的な視点から読み解いてみた(「『ドライブ・マイ・カー』が「自分の傷つきに気づきにくい男性」に与えてくれる“大切なヒント”」」)が、ここでは、村上春樹原作の小説『女のいない男たち』と映画『ドライブ・マイ・カー』の違いに注目してみたい。 というのは、映画『ドライブ・マイ・カー』は極めて完成度の高い原作の改変・翻案(adaptation)を行っているのだが、それによってかえって小説『女のいない男たち』における重要な問