一読してするりと飲み込める作品ではないが、その分きっちり読めば応えがある。こりゃまた随分とえらい変化球を投げ込んできたものだと拍手したくなる一作だ。 著者の柴田勝家さんは第二回SFコンテスト受賞作でこれが新人デビュー作だが、構成的にも語り的にもこれが一作目とは思えない密度。もちろんいろいろと荒いところがあるのは確かだし、断片的に語られていく形式と、その統合が表現的にこなれているかといえば、そんなこともない。それでもじっくりと断片を拾い上げながら最後まで読み、頭の中で統合して、「ニルヤの島」という景色を広げてみると、ああこれは凄いものを読んだし、物凄く読みづらかったが、この物語はこの形式でしか語りえなかったのだという静かだが深い実感がじわじわと広がってくる。 恐ろしいことに、4つのチャプターが入り乱れて話が進んでいき、最後にそれらが統合されるという形式をとっている。しかもそのチャプター内でも