東北大学大学院生命科学研究科の占部城太郎教授の研究チームは、理科の教科書にも掲載されている和名ミジンコ(Daphnia pulex:写真)が、有性生殖能力を失い雌だけで世代を維持していること、遺伝的多様性が極めて乏しくたった4タイプの遺伝子型(クローン個体)しか分布していないこと、それらすべてが別のミジンコ種との雑種であること、在来種ではなく北米から侵入した外来種であることを明らかにしました。また詳細な遺伝解析から、日本への侵入時期が数百〜数千年前に遡ることがわかりました。外来種の侵入定着は殆どの場合近年の人間活動によるものですが、数百年前の侵入は人間活動では説明出来ません。人の往来が盛んになる前にたった数個体がどうやって北米からやって来たのか、また、遺伝的な多様性がきわめて低いにもかかわらずなぜ長期間にわたって日本で個体群を維持しているのかなど、進化生態学の多くの謎を投げかけています。