受賞の言葉 この度は、拙著『月に吠えらんねえ』をSense of Gender賞に選んでいただき、誠にありがとうございます。 『月に吠えらんねえ』は詩を中心とした近代文学作品を読んで受けた印象を拡大解釈しまくった漫画です。 主人公の朔くん(萩原朔太郎作品から)は性自認が揺らぎ、肉体も変質を遂げます。 それは女装して自己愛に耽る「恋を恋する人」を書き、詩の中では現実と乖離した観念的女性像を追い求め、近代社会規範の中での「一人前の男性」からの落伍者としての懊悩を生涯持ち続けた、朔太郎作品が内包するジェンダー問題を表したものです。 朔くんを通して萩原朔太郎作品の多面的な面白さをお伝えできていたら嬉しいです。 一方、『月に吠えらんねえ』の物語の柱として文学者の戦争翼賛問題があります。 戦後偉人としての彼らを称揚するにあたり、翼賛詩については極力触れない、あるいは「不本意に、嫌々書かされていた」と変