岡山吉備高原で新しい町の建設がはじまった。そこに書斎と書庫を中心とする新居をもうけて、まず3万冊ある蔵書のうちの1万冊を移し、落ちついたら生活の拠点も、いまの横浜からまるごとそっちに移すつもりなんですよ――。 そんな話を紀田順一郎氏からきいたのが1990年代のなかばすぎだったろうか。 紀田さんは私の3歳上だから、当時はまだ60歳をすぎたばかり。質量ともに私などとはケタちがいの蔵書をかかえ、いまはいいだろうが、このさきたいへんなことになるんじゃないかな、と心配しないでもなかったので、そうきいて、なんとなくホッとしたおぼえがある。 ところが、この夏にでた『蔵書一代』という新著を読んで、がくぜんとした。あの吉備高原都市計画がバブル崩壊にはじまる不況で中断され、予定されていた交通面でのサービスもととのわないままに、移転14年後の2011年、新しい家を売り、やむなく全面撤去せざるをえなくなってしまっ

