鉛筆画で人物を描く木下晋(すすむ)さんと、実感から抽象を紡ぐ作家の村田喜代子さん。以前から交流がある2人が語り合うからには、面白くないわけがない。創作と介護、夫・妻、性と生死……。3回にわたる対談を収めた『存在を抱く』が藤原書店から刊行された。 木下さんは緻密な描写で対象の存在を写し取るように描き、村田さんは小説のなかで、「存在とは何か」を考え続けてきた。出会いのきっかけは、村田さんの絵画エッセー『偏愛ムラタ美術館』シリーズ。このなかで取り上げた木下さんの天井画には、自分が抱いてきた問いへの答えがあったのだと、村田さんは言う。エッセーを読んだ木下さんからも連絡し、付き合いが始まった。 2人のせめぎ合いは、「一点を凝視するような」性格の村田さんがやや優勢か。「だんだん村田ペースにはまってきたんだけど。嫌だな。僕」とこぼす木下さん。「今日はもう村田喜代子を裸にせんと」と意気込んで話していくと、