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ブックマーク / knakayam.exblog.jp (30)

  • 日本人の国民性 | 中山研一の刑法学ブログ

    まだ、死刑論議にこだわっているのですが、さきの著書のなかで、デイビット・ジョンソン(ハワイ大學教授)が、日に死刑が存置されている内在的な要因として、「贖罪と人権に関する日文化の特質」を挙げ、日人の国民性として以下のような指摘があるとしていました。 日人は、死刑は極悪非道な罪を贖うにふさわしい(時として)唯一の方法であり、死刑の廃止は治安上も人権尊重の思想上も絶対に許されないと考え、この確信は「切腹」の感性に歴史的な根拠を有しており、他文明の普遍的主張には無関心である上に、最近では犯罪被害者による償いの要求としても現れているというものです。 しかし、このような考え方を「日人の国民性」として、一般化することには問題があるように思われます。現に、その一例として、古く戦前の、しかも戦時の非常事態のなかで、著名な佐伯千仭博士が日人の伝統的な国民性を以下のように特色付けられていたことを指摘

    日本人の国民性 | 中山研一の刑法学ブログ
  • 死刑と向き合う裁判員のために(3) | 中山研一の刑法学ブログ

    6.日が死刑を存置する理由 これは、ハワイ大學教授の論稿ですが、死刑が世界的にも、またアジア地域でも縮小・廃止される状況の中で、なぜ日がなお死刑を存続し続けているのかという謎を、9つの仮説として描き出したものです。「歴史的解釈」としては、第2次大戦後の占領政策の中に死刑廃止が含まれず、保守的な自民党の長期支配が死刑存続を恒常化させたこと、また「外在的圧力」としては、アメリカの死刑存置論に従属し、アジアの地域連合がなお弱いこと、一方「内在的な力」としては、死刑に対する大衆的支持が贖罪と厳罰化を日文化の特質として象徴していることを挙げ、結論として、これらの謎に迫る理論的・実践的な研究の必要性が示唆されています。 7.韓国の国民参与裁判と死刑 これは、韓国清州大学教授の論稿ですが、韓国では死刑制度は存置されているものの、1997年に、存置論と廃止論の妥協の産物として、死刑の執行が停止され(

    死刑と向き合う裁判員のために(3) | 中山研一の刑法学ブログ
  • 死刑と向き合う裁判員のために(2) | 中山研一の刑法学ブログ

    4.裁判員の心理と死刑 2009年の内閣府による世論調査では、存置論(85.6%)の論拠として、「遺族の気持がおさまらない」「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」「死刑を廃止すれば凶悪犯罪が増える」が多く、一方、廃止論(5.7%)の論拠としては、「生かしておいて償いをさせる」「誤判の場合に取り返しがつかない」「国家であっても人を殺すことはゆるされない」が多かったとし、また市民の死刑支持に影響する要因としては、繰り返される犯罪報道と死刑に対する知識不足が重要であると指摘されています。そして実際に、某私立大學法学部1年生約500人に対して、ある程度の予備知識を与えた上で行った調査では、死刑賛成者の比率がかなり低くなっているほか(60%)、「誤判の場合に取り返しがつかない」という項目が死刑反対群だけでなく賛成群にも共通に支持されていることが分かったといわれています。これは、冤罪問題の重要性を示唆し

    死刑と向き合う裁判員のために(2) | 中山研一の刑法学ブログ
  • 死刑と向き合う裁判員のために(1) | 中山研一の刑法学ブログ

    最近、福井厚編著『死刑と向き合う裁判員のために』(現代人文社、2010年4月)が出版され、早速、興味深く一読しました。以下では、その内容のうち、注目すべきところを3回に分けて、感想を含めた紹介を試みたいと思います。 1.書の問題意識 書は、新しい裁判員裁判で死刑事件が扱われた場合に、裁判員となり得る誰もが当面すべき死刑の問題について、少なくともこれだけは知っておいてほしいことをまとめたもので、その立場は、死刑はできるだけ避け、できれば廃止したいという方向で一貫しています。したがって、多くの死刑存置論者にとっては、反論もあり得ることが十分に予定されています。むしろ日では、今こそ死刑の論議を起すことが求められているのです。 2.国民の健全な社会常識 裁判員裁判は、これまでの職業裁判官による専門的な法律的判断の中に一般市民にも理解可能な「市民感覚」を反映させようとするものですが、事実の認定

    死刑と向き合う裁判員のために(1) | 中山研一の刑法学ブログ
  • 中国の死刑の制限 | 中山研一の刑法学ブログ

    中国は、アメリカと並ぶ死刑大国であり、死刑判決数も死刑執行数も突出して多いことは、すでに周知の事実になっています。アムネスティ・インターナショナルの調査によりますと、2009年、アメリカの死刑執行数は52人で世界5位、日は7人で10位であるのに対して、中国は1718人で、ダントツの1位です。 しかも、在日の中国人専門家によりますと、当の執行数ははるかに多く、2000人から1万5000人位もあるといわれ、中国政府はその数字を公表せず、むしろ最高の国家秘密になっているのが現状です。しかし、さすがに中国でも、国内外の批判に答えるために、最近の刑法改正で、死刑の罪名の削減が行われました(王雲海中国の刑法改正と死刑制度の変更」法律時報83巻4号118頁、2011年4月)。その要点は以下の通りです。 1.中国の1979年の刑法典では、死刑罪名は28個であったが、1997年の刑法典では68個に増加

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  • 阿部教授の緊急提案 | 中山研一の刑法学ブログ

    昨日、知人の弁護士を通じて、阿部泰隆氏(中央大学教授・行政法)による「大震災・原発危機 緊急提言」と題する文書がメールで送信されてきました。これは、今回の非常事態に対する政府の対策が後手後手にまわっていることを鋭く批判し、今からでも先手を打つような思いきった緊急対策をとるべきことを強くアピールしたものです。私も、基的に賛成するところが多いのですが、その中でもとくに注目すべきいくつかの視点をあげておきます。 第1は、震災と津波の直後の対応が決定的に遅れたことで、直後から人命にかかわる巨大な被害が想定され得たはずであるから、直ちに、自衛隊と消防を緊急招集して全面介入すべきで、とくにヘリコプターを最大限に活用した人命救助に当たるべきであったという点です。私も、これが、災害救助の体制を後手に回らせた最大の原因であったと思います。 第2は、そのために災害状況の把握が遅れ、避難所の場所の特定も困難で

    阿部教授の緊急提案 | 中山研一の刑法学ブログ
    concordantia
    concordantia 2011/03/21
    詳細が不明なのでなんとも言えないけど,「阿部教授は、死刑囚の志願制まで提案されています」 の部分はひっかかる。
  • 米イリノイ州で死刑廃止 | 中山研一の刑法学ブログ

    では、少年事件に関わった共犯者3人全員に最高裁判所が死刑判決を下したことを,1面トップに「元少年3人死刑確定へ」と大きく報道した3月11日の朝日新聞朝刊が、その8面の国際欄の片隅に、「米イリノイ州死刑廃止」という小さい記事を乗せています。目立たないので、あやうく見過ごすところでした。前者にも問題がありますが、ここでは、後者の問題について、TBSニュースの以下の記事を紹介しておきます。 「米・イリノイ州で死刑制度廃止へ アメリカ・オバマ大統領の地元であるイリノイ州で、9日、死刑制度を廃止する法案が成立しました。『これは私が知事として下す決断の中で最も難しいものでした』(米イリノイ州 クイン知事)。イリノイ州のクイン知事は9日、死刑廃止法案に署名、イリノイ州では死刑が廃止されることになりました。 オバマ大統領の地元であるイリノイ州では2003年、死刑確定囚の冤罪が発覚したことから当時の知事

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  • 裁判員制度の講演会 | 中山研一の刑法学ブログ

    2月8日(水)午後7時から、この高齢者用マンションの入居者を対象に、私が「裁判員制度について」講演をする機会がありました。裁判や法律に関する固い話題なので、聴衆が集まって下さるか心配でしたが、20名近くの入居者が熱心に聞いて下さり、安心した気持で、できるだけ分かりやすく、話をするよう心がけました。 当日の話の中から、私がとくに強調した点をいくつかあげておきたいと思います。 1.実は戦前の1923年(大正12年)に、大正デモクラシーの影響のもとで、正真正銘の「陪審制度」が導入され、1943年(昭和18年)まで約20年間も実施されていたという歴史的事実があります。これは、陪審員12名だけで事実認定を行うという点でも特色がありました(英米方式)。無罪率は17%にも及び、控訴は出来ませんでした。 2.今回の「裁判員制度」は、2001年(平成13年)の「司法制度改革審議会」の意見書に始まり、2009

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  • 死刑廃止に向けた国連の決議案 | 中山研一の刑法学ブログ

    でも、最近、裁判員裁判による死刑判決をめぐって、死刑制度への対応が改めて問われてきています。世論は圧倒的に存置論だといわれていますが、死刑判決に当面した裁判員の深刻な苦悩に直面して、その心理的強制の連続と拡大を避けるための方向転換を模索する方向に「世論」が動くことが期待されるところです。 折から、国連総会の第3委員会が、2010年11月に、死刑存置国に対して、死刑の使用の制限、死刑相当犯罪の削減、および死刑廃止を目指して死刑執行の一時停止(モラトリアム)を確立することを、そして死刑廃止国に対しては死刑を再導入しないよう求める決議案を、賛成107、反対38、棄権36の賛成多数で可決したと報じられています。この3年間で、賛成が1国増えたのに対して、反対票を投じた国は54から38へと着実に減少している点が注目されます。先進国といわれる国がほとんど死刑廃止国となっている中で、決議案に反対票を投

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  • 裁判員経験者の死刑アンケート | 中山研一の刑法学ブログ

    栃木県の「下野新聞」(12月9日)には、裁判員制度開始から1年間に県内で裁判員を経験した人に対するアンケートに答えた32名の中で、死刑に「賛成」が53・1%、「反対」が18・7%、「どちらともいえない」が28・1%という結果が出たと報じられています。 これは、共同通信社が8月に実施した全国の有権者対象の世論調査で、「賛成」「どちらかといえば賛成」が75・9%だったのと比べると、2割以上の差があり、死刑に慎重な傾向が見られるとのコメントがついています。 たしかに、死刑判決の言い渡しに直面する可能性のある人の方が、慎重な対応を示すことは十分に考えられますが、しかしそれでも約3割の人が「どちらともいえない」としており、今後もまだ判断が揺れる可能性が残されています。そして、最近の死刑事件に対する無罪判決(鹿児島地裁)は、死刑への慎重さをさらに進める方向に作用するでしょう。 しかし、その前に、この種

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  • 検察官の職業倫理 | 中山研一の刑法学ブログ

    裁判員裁判が開始され、かつて「絶望的である」(平野)といわれた日の官僚的な刑事裁判が、市民の参加によって、抜的に改善されるのではないかという期待感があったことは事実です。しかし、事柄は決して簡単なものではなく、むしろ事態の困難性が顕在化しつつあるともいえる状況が見られるのです。 たしかに、多くの市民が裁判員として熱心に参加していますが、固い守秘義務があるため、その経験が次の裁判員に全く生かされず、また裁判員の負担軽減の名のもとに、短期間に死刑問題を含む重大な判断を迫られるという苦しい立場に立たされています。 そして、さらに重要なことは、警察の捜査方法(密室での自白誘導)がそのままで、検察官によるコントロールがなく、検察官が有利と考えて提出した証拠だけを見て、裁判員が判断しなければならないというところに「決定的な限界」があるという点です。 これは、検察官による「証拠開示義務」の問題で、欧

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  • ビデオの流出と守秘義務 | 中山研一の刑法学ブログ

    尖閣諸島沖の中国漁船の映像は自分が流出させたと神戸の海上保安部の保安官が上司に申し出るという事態が発生し、捜査当局はこの保安官を国家公務員法違反(100条1項の守秘義務違反で、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の疑いで調べています。件の法的な性格と取扱いの方法については、すでにいくつかのコメントが加えられていますが、私も少し感想を述べておきたいと思います。 問題は、件の公開された映像が、国家公務員法の定める「守秘すべき秘密」に当たるのかという点ですが、「一般に知られていない」「秘密として保護に値する」ものをいうとする判例の基準から見ても、すでに事件は広く知られ、一部は国会でも公開されているからもはや秘密とはいえないという説と、非公開とした政府の外交上の判断に抵触する限り秘密といえるという説に分かれています。 政府は後者の解釈に立って、保安官の行政処分や刑事責任の追及に向かう可能性が

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  • 検察改革の真の焦点 | 中山研一の刑法学ブログ

    郵便不正事件にからむ大阪地検特捜部の不祥事を機に、柳田法相が設置した「検察の在り方検討会議」の座長に、千葉前法相が就任することが決まりました。この検討会議は「第三者」による法相の私的諮問機関ですが、第三者性が確保されるかどうか、人選を含めてまだ定かではないといわれています(朝日新聞10月23日)。 しかし、たとえその検討結果が特捜部を含む検察組織の改変を決めたとしても、それで今回のような検察の不祥事の再発が防げるという保障は、残念ながらありません。問題は、組織いじりのレベルを超えたもので、むしろ「手づかずの別個の問題」があるからです。 それは、検察(警察)による「捜査手法」の問題です。今回の事件でも、「誘導」などの理由で裁判で不採用になった34通もの「虚偽の供述調書」を作成した検察官の責任は問われないままになっています。また、取調べメモも破棄されていますが、何とこれは最高検の指示にしたがっ

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    concordantia
    concordantia 2010/10/27
    「今こそ、捜査過程の全面的な「可視化」と証拠の全面開示に向けた一歩を踏み出す最大のチャンス」
  • 死刑判決の破棄差し戻し(2) | 中山研一の刑法学ブログ

    ところが、最高裁第3小法廷の多数意見は、そのような間接事実による有罪の認定には、審理不尽の違法と事実誤認の疑いがあるとしましたが、その理由は以下の2点に要約されます。 第1に、原審が、件灰皿内に遺留されていたたばこの吸殻に付着していた唾液中の細胞のDNAが被告人のそれと一致したという点から、被告人が事件当日に同マンションに赴いた事実を強く推認できるとした点については、被告人が1審段階から、自分が息子夫婦に自分が使用していた携帯灰皿を渡したことがあり、息子のがそれを件灰皿に捨てた可能性があると具体的に反論をしているのに、この点に関する審理が尽くされていない。 第2に、仮に被告人が事件当日にマンションに赴いた事実が認められたとしても、その他の間接事実を加えることによって、「被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明できない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が存

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  • 最高検の捜査の可視化 | 中山研一の刑法学ブログ

    最高検察庁は、大阪地検特捜部の主任検事による証拠改ざんのほか、その2人の上司による犯人隠避容疑についても、いち早く逮捕に踏み切りましたが、いまだ捜査は継続中で、その帰趨ははっきりしない状態が続いています。 証拠を改ざんした前田容疑者については、容疑を認めているので、11日に起訴する方針が決まったとのことですが、しかし2人の上司は、いずれも、前田容疑者から過失による改ざんの報告を受けたと主張して、犯人隠避の容疑を全面的に否認していると報じられています。最高検の捜査が「筋書き」通りに進むのかどうかが問題ですが、最高検の責任も含めて、その捜査方法じたいの全容解明と説明責任こそが求められているというべきでしょう。 もしもこのままで、最高検が前田容疑者のほか2人の上司も起訴するとしますと、裁判所は、容疑を否認している特捜部の前部長と副部長の供述を信用するか、それとも捜査機関である最高検察庁の主張から

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    concordantia
    concordantia 2010/10/11
    「柳田法相が、この機に及んでもなお、最高検の捜査を見守るといい、捜査の「可視化」にも明確な立場を示していないというのも、消極的に過ぎると思われるのです。」法相のやる気の無さにはがっかりです。
  • 法科大学院の改善策 | 中山研一の刑法学ブログ

    文部科学省は、新司法試験の合格実績が低迷する法科大学院について、2012年度予算から、交付金や補助金を減らすことを決めたといわれています(朝日新聞9月16日夕刊)。同省は、「兵糧絶ち」の基準を示すことで各校に危機感を促すとともに、乱立する大學院の再編を進めたい考えだというのです。 このような考え方は、すでに2009年の中教審法科大学特別委員会が示した方向であり、この前にも触れました、法務省・文科省「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」の検討結果(2010年7月6日)の趣旨にも沿うもので、9月16日に開かれる「中教審特別委員会」で発表されることになっているといわれていました。 たしかに、法科大學院の志願者数が大幅に減少し、非法学部出身者・社会人の割合が減少していること、入学選抜の競争性が確保されていないこと、新司法試験の合格率の低迷が続いていることなど、現在の法科大学院のかかえる問題が

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  • 取調べの適正と水掛け論 | 中山研一の刑法学ブログ

    郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件で起訴された厚労省の元局長に対する判決公判が9月10日に開かれ、予想通り、無罪の判決が出ました。 件の裁判の特色は、元局長の関与を認めたとされる元部下たちの供述調書の大半が「検事の誘導で作られた」などとして証拠採用されなかったという異例の展開を辿った点にあります。しかも、この事件を担当した検察官が、取調べのメモを全部破棄してしまっていることもわかり、それは最高検の指示にも反することが判明しましたので、この事件の「取調べの適正さ」が改めて注目の的になっていたのです。 この点について、公判審理の過程では、件の取調べを担当した検察官は6名全員が「取調べは適正に行いました。調書は正しい」と臆面もなく供述していたことに注目する必要があります。しかし、取調べを受けた当時の村木被告は、否認しても聞いてもらえず、「私の指示がきっかけで、事件が起こってしまった」とい

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  • 裁判員法に関する検討会(2) | 中山研一の刑法学ブログ

    引き続き、検討会の議事録から読み取れる諸点をあげておきます。 5.法曹三者とも、新しい裁判員法の制度にどのように対応して行くかという観点から発言していますが、いかに手続をわかりやすくして裁判員の負担を軽減するのかといった観点からの協議会や研修会の取り組みが紹介されています。 6.事務当局から出された資料では、平均審理期間が全体で5.5日となっていること、検察官の上訴がゼロであること、公判準備手続の期間がやや長くなっているが、保釈率が高くなっていること(75.4%)、裁判員のストレス解消のためのカウンセリングの必要が指摘されたこと、などの点をあげることができます。 以上が、3回の検討会の議事録から感じ取られる特色ですが、とりあえず以下に感想的なコメントを加えておきます。 第1は、この検討会の性格ですが、法務省の刑事局が事務局として議論に積極的に参加し、法務省における検討作業に協力するという趣

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  • 裁判員制度に関する検討会(1) | 中山研一の刑法学ブログ

    新しい「裁判員法」は、2004年(平成16年)5月21日に成立し、5年後の2009年(平成21年)5月21日から施行されました。もう1年以上を経過し、起訴件数が1800件を越え、判決数も約570件に達しています。 これは新しい制度でしたので、附則9条に、この法律の施行後3年を経過した場合に、その施行状況に検討を加え、所要の措置を講ずるものとする旨の規定があります。そこで政府は法務省内に、裁判員法の円滑な実施と定着を図るため、施行後間もない2009年(平成21年)9月に、「裁判員制度に関する検討会」を立ち上げ、すでに3回の会合が行われています。その議事録を読む機会がありましたので、その特色を指摘しておきたいと思います。 1.委員の構成は、法曹三者(裁判所、法務省、弁護士会)の代表や学者のほか、マスコミや経済界、それに被害者センターや主婦連など、多彩ですが、事務局が法務省刑事局に置かれている点

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  • 見えぬドナー意思 | 中山研一の刑法学ブログ

    改正臓器移植法のもとで、ドナー人の提供意思が不明な場合でも、家族の意思だけで可能となった「脳死移植」が2例行われました(8月9日と19日)。1例目はまだ、生前に人が提供意思を口頭で家族に伝えていたといわれていましたが、2例目は書面だけでなく口頭でも提供の意思を示していなかったドナーからの移植として、はじめてのケースです。 この1例目と2例目には、「ドナーの提供意思」の取扱いについて、重要な相違があることに注意しなければなりません。最近の改正法によって、人の意思が不明な場合でも家族が承諾すれば脳死移植が可能となりましたが、実際には「人の意思の尊重」が前提となっていますので、今回の2例目でも、人による拒否の意思がなかったこと確認したといわれており、将来は運転免許証などに「拒否の意思」の記載欄を設けることも考えられているとのことです。しかし、これは「提供意思カード」以上に実現困難でしょ

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