平安後期の長編王朝文学「夜の寝覚(ねざめ)」の失われた最終部(末尾欠巻部)の一部を写した南北朝時代の古筆切(こひつぎれ)(古代・中世の優れた書の断簡)が京都市で見つかり、東京の実践女子大が購入した。鑑定した国文学者の横井孝・同大教授によると、末尾欠巻部と特定できる古筆切は初めて。同じ部分の写本ではないかと推測されていた古筆切9点とも類似するため、合わせて約2000字の本文を復元できる可能性が出てきた。 「夜の寝覚」は、貴族の女性「寝覚の上」の恋や波乱の生涯をたどる。作者は「更級日記」で名高い菅原孝標女(たかすえのむすめ)とも言われる。内容的に4部構成とみられるが、末尾など2部を欠いたまま転写され、本文の復元が課題となってきた。 今回の古筆切は縦16・9センチ、横14・8センチの高級紙に約190字が書かれ、桐(きり)箱や鑑定書に「後光厳院」の筆と記される。1~2行目には「しらざりしやまぢの月