田中幸一(アレクセイ) 世界を闇が覆っている。――こんな風に書くと、いささかファンタジー小説風になってしまうけれど、2001年9月11日以来の世界を素直に表現すれば、こういうことにもなってしまう。 アメリカを中心にして世界に広がる禍々しい戦火の黒煙は、当然にもアメリカの軍事同盟国である日本を真先に覆い、今の日本は「戦後」の次の「戦前」をも通 り過ぎて、まさに「戦時」にあると言うべきである。また「戦時下」らしく、日本人大衆の心も、おのずと「お国」の下に結集しつつあるらしい。 2004年4月、アメリカを中心とした多国籍軍の占領下、それに抵抗するイラク人勢力のロケット砲攻撃や自爆攻撃が頻発するイラクで、民間日本人3名がイラク武装グループに拉致されるという事件が発生した。 武装グループは人質3名の命と引き換えに「イラクからの自衛隊の撤退」を3日間と期限を切って要求してきた。これに対し日本政府は