『あぁ、監督』(野村克也著・角川oneテーマ21)より。 【もうひとつ私がヤクルトに持ち込んだのが、のちに「ID(インポート・データ)野球」と呼ばれるようになったように、データをはじめとする”無形の力”を最大限に活用することだった。そして、これこそがいまも変わらぬ野村野球の最大の特長だといっていい。 というのは、技術力のような目に見える力には限界があるからである。この考えは、前にも述べた選手時代の私自身の経験に基づいている。プロ5年目に突然スランプに陥った私は、おのれのバッティング技術の限界を知り、テータを活用することで壁を破ることができたという、あの経験である。 そのために力を注いだのが、スコアラーの教育だった。 みなさんは、スコアラーの仕事をどのように考えておられるだろうか。 「相手チームのバッテリーの配球をチェックして記録する」「バッターの得意・不得意コースや球種を調べて分析する」…