目次 1.確率と亡霊 2.可能性と単独性(本記事) 3.唯一者と絶対性 4.政治と未来 2.可能性と単独性 この傲岸さに理論的形象を与えている形而上学的イデオローグは、S.A.クリプキの名で呼ばれている。固有名を現実世界についての複数の「物事がそうでありえた仕方ways things could have been」としての「可能世界possible world」を通じて同じ対象を指示し続ける「固定指示子rigid designator」として捉えたことで知られるこの人物は、固有名を「確定記述definite description」に還元する立場(記述説)を論駁したとされている。 記述説に基づくなら、バラク・オバマという名前は、1961年生まれのアフリカ系アメリカ人であり、ハワイ出身であり、ハーバード・ロー・レビューの編集長を務めたことがある法学者であり、第44代のアメリカ合衆国大統領で