「つかまれー!」 上空に静止したヘリコプターから自衛隊員が叫び、ロープで下りてきた。茨城県常総市大房の松沢芳子さん(66)と孫の竜乃介君(9)は必死で隊員の服の袖を握りしめ、自宅2階のベランダからつり上げられた。 ヘリは鬼怒川の決壊現場から西に約3キロの石下総合運動公園へ。午後6時前、グラウンドに降ろされた。自宅で浸水が始まってから約5時間がたっていた。竜乃介君は「怖かった」。 ぐったりして消防隊員に背負われた人、はだしのままの人……。同公園には、ヘリで救出された人たちが次々に到着した。 鬼怒川から約500メートルの自宅にいた介護福祉士、後藤忍さん(42)=同市三坂町=は正午過ぎ、大きな音を聞いた。「ドーン」という衝突音。続いて「メリメリ」「ガシャン」。急いで2階のベランダに出た。 そこで見た光景に、血の気が引いた。「東日本大震災のとき、テレビで見た津波と同じ。もう死ぬんだと思った」 屋根