臨床医学におけるエビデンスが主張に権威性を付加する道具として無批判に用いられることがしばしばあると感じる。エビデンスを盲信し、任意の臨床疑問に対する「科学的に正しい答え」はこの世のどこかに出来上がった形で用意されているのだと幻想を抱いているかに見える人々もいる。しかし、エビデンスとは紛れもなく人の手によって生み出され解釈された産物であることを忘れてはならない。現代においても、テーマによっては信頼性の高いデータの蓄積が充分とは言えないことが多々あり、未だに明確な答えを誰も知らない臨床的問いも数多く存在する。 臨床研究は一般に基礎研究などと比較して条件の統制が困難であり、信頼性の高い結論を得るためには膨大なサンプル数が必要となる。そのため信頼性の高い研究には莫大なコストがかかり、特に長期間の追跡においては顕著となる。そのような研究を行える施設は限られ、充分な追試も行われづらい。企業との利益相反