この連載では、先月まで米ビジネススクールで助教授を務めていた筆者が、世界の経営学の知見を紹介していきます。この連載は月1回ペースで書いているのですが、筆者の日本帰国(早稲田大学ビジネススクールへ移籍)のため、9月中はこのコラムを配信できませんでした。失礼しました。 さて、私は昨年『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)という本を刊行したのですが、その中で特に大きな反響をいただいたのが、組織パフォーマンスの向上に重要な「トランザクティブ・メモリー」を紹介した章でした。 大事なのは「情報の共有化」ではない トランザクティブ・メモリーは、世界の組織学習研究ではきわめて重要なコンセプトと位置づけられています。その要点は、組織の学習効果・パフォーマンスを高めるために大事なのは、「組織のメンバー全員が同じことを知っている」ことではなく、「組織のメンバーが『ほかのメンバーの誰が何を知ってい