嫌な体験を忘れる方法はないだろうか、という人がいる。だが、忘れたら困るのでは無かろうか。レイプされたとして、それが忘れられなくて辛いという人は、水に流すことを望んでいるのだろうか。レイプした相手に会っても、笑顔で屈託無く接したいのであろうか。罪を体現するのは人間である。この世の中は因縁で出来ているのである。因縁こそが世界の本質なのである。すべての言動は後患となりえる。この大地に産み落とされると、われわれは因縁という業病に感染し、それは死ぬまで続くのである。 会津の人間が未だに薩長を恨んでいるのも、これは人間としてのルールなのである。会津と無関係のわれわれが歴史を振り返るとしても、薩長は勝利感を持って永眠し、会津藩は死後も敗残者として苦しむと考えたりする。戊辰戦争に負けた側は靖国神社で祀られていない。白虎隊は官軍の大軍勢になぶり殺しにされ、その鈴なりのように並んだ血まみれの死体は野ざらしにさ