銀行業界では、また新しい行列ができている。今回、列に並んでいるのは、不安に駆られて貯金を引き出しに来た預金者ではない。 今度は銀行自身が列を成して、今からほぼ6カ月前、深刻な危機の真っ只中に政府から注入を受けた公的資金を返済しようとしているのだ。 JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなど、当局のストレステスト(健全性審査)に合格した比較的体力のある米銀10社は、6月9日、総額680億ドルに上る政府保有株式を買い戻す承認を得た。 英国では、ロイズ・バンキング・グループが国に公的資金の一部を返済し始めた。 銀行が公的資金の返済に熱心な理由は明白だ。国の持ち株比率を下げることで、国の影響力を減らしたいのだ。また、公的資金の返済は、銀行の体力がいくらか回復したことを一般に知らしめる宣伝にもなる。 返済は多くの面で、納税者にとっても歓迎すべきものだ。金融システムが安定し、業績と株