転移者たちは新たに征服した港町ドウラスエでの新居を放棄された商館の一つに定めた。温泉浴場に一番近かったことが選定の理由だった。 商館は四階建てで、街路側が店舗と住居、反対側が倉庫になっている。一階にはハティエ兵たちが詰めている。二階が鳴条姉弟の部屋でホールで文武が、奥の個室で湯子が寝ていた。三階では真琴と司が暮らし、四階には最重要の人質が軟禁されている。 こうして、ようやく不完全ながら一人一人のプライバシーを確保できたのだった。 しかし、寝る前まで情報交換する習慣はすぐには変えられず、姉弟は二階のホールで額をくっつけんばかりにして話し込んでいた。 「それでね。湖の対岸は断崖続きで上陸できる場所が少ないんだけど、そこもソラト総督が押さえているみたい。例外がクロキって港でこっちはフォウタの支配……」 バンッ! 「あ!またイチャイチャしてる!!」 びっくりして振り返った文武の両目を姉が両手で覆っ