何をもって「異次元」と言えるのだろう。 統計を取り始めてから過去最低の出生数になり、岸田政権が掲げたのは「異次元の少子化対策」。柱の一つは児童手当の拡充であり、その財源を巡る議論も注視しているが、もっとも気になるのはそもそもこの対策によって子どもを産み、育てたい社会となるかどうかだ。というのも、発表された対策案ではこれまでの次元から抜け出しているようには今のところ思えないからだ。 先月、私は「母は死ねない」(筑摩書房)という20人近くの母たちを描いたノンフィクションを刊行した。彼女らの抱える課題はあまりに多様だ。精子提供により子どもをもつことを決断した母や、特別養子縁組で親子になった家族、同性カップルによる子育ての話も聞いた。