二戸市の酒蔵「南部美人」は1日、伝統産業の市場調査などを手掛ける「ima(アイマ)」(東京)と提携して日本酒業界では初となる人工知能(AI)を活用した酒造りの実験を始めた。杜氏(とうじ)が経験に基づいて判断する酒米にとって最適な吸水時間を、AIでデータ化する試みだ。 吸水は酒米を蒸す前の工程で、水に浸す時間の長短でこうじ菌の繁殖度や酒米の溶けやすさが変化する。杜氏は酒米の種類、精米歩合、気温など複数の条件を総合して吸水時間を決める。 南部美人5代目蔵元の久慈浩介さん(45)は「吸水率が1%でも変わると、酒の仕上がりは大きく異なる」と説明。杜氏の経験や勘をデータ化してAIに蓄積すれば「人手不足に悩む酒蔵のためにもなる」と実験の狙いを語る。 吸水時間の測定には、東京のIT企業が開発した解析ツールを活用する。酒米が吸水する様子を数秒ごとに映像化。酒米の外見の変化などから、杜氏が最適と判断する時間