定期的に、数学は何の役に立つのかと分からないと言っている人の話を見かける。四則演算ぐらいならば万人が使うし、多少は高度な解析学や線形代数も研究職や技術職ならば避けては通れないのは周知なのではあるが、そのような発想にいたった理由も分からなくも無い。数学が独立した科目として成立しているため、学習中に現実の事象との接点が見えないのであろう。なお悪い事に高校までの物理は、なるべく数学に依存しないように工夫をしてしまっている。数学は何かと役立つと力説していても、実際に自分が数学と現象をどれぐらいつなげられるかを考えたときに、心もとない人々は少なくないはずだ。 1. 事象と実験を数理につなぐ本 そんなあなたの数学有用論に広がりを持たせてくれる便利な本が出ていた。「実験数学読本」だ。「真剣に遊ぶ数理実験から大学数学へ」と副題がついているが、身近な事象や簡単な実験結果を、数理的に解析していく方法を大雑把に