福祉や医療の番組をつくってきたテレビディレクターは、膵臓(すいぞう)がんになって何を知ったのか。再再発の宣告を受けた昨年2月から亡くなる11月まで、時間と競うように書いた本「〈いのち〉とがん 患者となって考えたこと」(岩波新書)が、20日に出版された。ジャーナリストとして正確に伝えようとする意思と、死に向き合って生きる患者としての思いが交錯する。 膵臓がん再再発 著者の坂井律子さんは昨年11月26日、58歳で亡くなった。NHKで教育、福祉、医療の番組を手がけ、出生前診断をどう考えるかをライフワークとして本も書いた。 山口放送局長から編成局編成主幹になり、家族の待つ東京に帰ってすぐの2016年5月、膵臓(すいぞう)がんとわかった。手ごわいがんだが、意欲を持って闘病を続けた。 〈一週間前、再再発を告げられた〉。本は、18年2月20日の記述から始まる。 前年暮れ再手術にこぎつけて、職場復帰を検討