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  • ボーア研究所のコペンハーゲン精神(わけへだてのない協力・自由な討議・ゆとりとユーモア) - そういちコラム

    「量子力学」の建設者、ニールス・ボーア(1885~1962、デンマーク)は、アインシュタインと並んで、20世紀を代表する物理学者だといわれます。 でも「量子力学とは何か」をきちんと説明する能力が私にはありません。とりあえず「現代物理学の重要な領域で、原子や素粒子などの、極小の世界の状態を説明する科学」というくらいのイメージで、以下読んでいただければ。 *** ボーアとアインシュタインはどちらも20世紀物理学の巨人ということですが、アインシュタインのほうがジャーナリズムでの扱いなどから一般には名前が知られています。 でも、ボーアのほうがアインシュタインよりもはるかにまさっていることがあります。それは、多くの弟子を育てたことです。 アインシュタインは、ほとんど弟子をとりませんでした。 一方、彼が所長をつとめるコペンハーゲン(デンマーク)の「ボーア研究所」には、世界中から物理学者が集まりました(

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  • 「専門の事典を手元に置いて、ちょっと調べる」習慣のすすめ - そういちコラム

    私はいくつかの小型の専門事典(辞典)を手元において、ときどき参照しています。 「インターネットでたいていのことは調べられる」というのは、たしかにそうでしょう。私もインターネットで調べたり、確認したりということはしょっちゅう行っています。 でもその一方で「これは自分のテーマ・関心領域」と思うことについては、紙のである専門事典・小事典を手元において、必要に応じて参照するようにしています。 紙の事典の良さは、おもに2つあります。 ひとつは、情報の信頼性です。 紙の専門事典は、その分野で認められた専門家がとくに慎重に書いて、さらにほかの専門家や編集者のチェックを受けた内容でできているのです。「誰が書いたか不明で、特段のチェックを受けていない」という多くのインターネットの記述とは、わけがちがいます。 もうひとつは、説明が簡潔であること。 記述のスペースが非常に限られるので、基的な要点だけが書かれ

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  • 自分の町を出たことがなくても、世界を語ったカント - そういちコラム

    ドイツ観念論」の大哲学者イマニュエル・カント(1724~1804)は、大学で哲学のほかに地理学の講義も行いました。その講義は大好評で、多くの学生や市民が聴講しました。彼は世界の町や自然を、目に浮かぶように生き生きと語りました。 しかしカントは、生まれ育ったドイツ(プロイセン)の都市ケーニヒスベルク(現ロシア領のカリーニングラード)をめったに出たことはありませんでした。 毎日決まった時間に散歩するなど、規則正しい生活をしながら研究に打ち込み、市内の大学で講義するのが、カントの毎日でした。 その合間に、休みの日にはいろいろな職業の、さまざまな経験を持つお客さんを事に招いては世間話を楽しみました。そのときは哲学の話は一切しなかった。 地理学の講義は、そんなふうに書物や人から得た知識で話していたのです。 *** なお、カントは生涯独身でした(召使や料理人はいました)。学究肌で内向的なところがあ

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  • 妻のワークスペース・小さめのデスクを置く - そういちコラム

    60数平米の古い団地をリノベーションして、夫婦2人で暮らしています。リノベしてから15~16年経ちます(リノベの設計は寺林省二さんによる)。テラバヤシ・セッケイ・ジムショ 2人暮らしですが、我が家にはデスクが3つあります。ひとつは私の書斎デスク。あとの2つはデスク。 こちらがデスク1号。引き出しもないので「テーブル」といってもいいかもしれません。は書道をずっと続けていて、自分の教室も運営しています。こちらの机はおもに書道をするためのもの。 机まわりには書道の道具があり、正面の棚には書道に関する資料・書類のファイルなどがある。この机の左側には私の書斎デスクがあり、私の棚を覆っていますが…… *** こちらはデスク2号。これは事務処理用の机です。はこのパソコンで書道教室のブログを書き、教室の経理などの事務処理を行います。 この2つの机はオーダーメイドです。家具職人の真吉

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  • 今日の日経新聞のあちこちにみられる「衰退する日本」 - そういちコラム

    最近の日経新聞(朝刊)を読んでいると、「この日の新聞は、まるで『衰退する日』をテーマに特集しているみたいだ」と思えることが、ときどきあります。 もちろん、そんな「特集」を組んでいるわけではありません。 でも、ざっと眺めただけで、「衰退する日」に関わる大小さまざまな現象がそこにはたしかにみられるのです。今朝の日経新聞(2022年8月18日朝刊)も、まさにそうでした。 *** 今朝の日経新聞の一面のトップ記事は「武田〔薬品〕、ワクチン世界販売 国内企業初、まずデング熱」という記事でした。 「五輪組織委元理事を逮捕」は、1面ではあるがその次。日経は「その事件が株価に影響するかどうか」をまず重視するところがあります。だから「経済新聞」といえるのです。 武田薬品のニュースは、それ自体は日企業の新展開ということで「良いこと」なのかもしれません。 でも、それはつまり「これまで日製ワクチンは世界で

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  • 「太陽の塔」という幸せなプロジェクト - そういちコラム

    先日、NHKの『歴史探偵』という番組で、1970年の大阪万博の「太陽の塔」についてやっていました。戦国時代や幕末などのいかにも「歴史」という感じではないテーマは、この番組ではめずらしい。 太陽の塔については、私も関心があります。この番組の内容と重なることも多いのですが、記事を書きたくなりました。 *** 太陽の塔は、万博の公式のシンボルとして建てられたのではありません。公式のシンボルタワーは別のものが建っていました。 そして、岡太郎(1911~1996)が万博で依頼されていたのは、塔をつくることではなく、メインゲートに接する広場での展示の企画でした。 広場は日を代表する建築家・丹下健三(1913~2005)の設計で、高さ30メートルの鉄骨構造の大屋根が覆うモダンな空間にする計画でした。 岡はこの大屋根を突き破る、「モダン」とは来相容れない、あのオバケみたいな塔(それも巨大な70メー

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  • 日本にもっと大規模な、本格的なミュージアムを - そういちコラム

    今日は夫婦で上野の森へ行ってきました。東京都美術館で開催されている「毎日書道展」をみるためです。書道展として最も代表的なもののひとつ。が書道教室を営む書道の先生で、自分やお仲間が毎年出品している。この書道展に行くのは年中行事です。 書道展のあとは、同じく東京都美術館で開催されていた「フィン・ユールとデンマークの椅子」展をみました。 この企画展は美術館に行って知りました。私は、建築やインテリアには興味があり、この手の展示にもたまに足を運びます。私にとっては、今日は書道展よりもフィン・ユール展がメインになりました。 フィン・ユール展から・さまざまなデンマーク家具 フィン・ユール(1912~1989)は、デンマークの建築家・家具デザイナー。曲線的で優美な椅子のデザインでとくに知られています。 「北欧家具」「北欧デザイン」というジャンルがありますが、その代表はデンマークのものです(フィンランドな

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  • 真理がたどった物語・メンデルやコペルニクスの史実と『チ。-地球の運動について-』最終巻が描く歴史の真実 - そういちコラム

    棚から取り出して、昔に買った古い新書を読みました。中沢信午『遺伝学の誕生 メンデルを生んだ知的風土』(中公新書、1985)――「遺伝の法則」を発見したグレゴール・メンデル(1822~1884、オーストリア)の評伝です。今年(2022年)はメンデル生誕200年。 メンデルは修道士でした。彼の修道院はオーストリア(現在はチェコ共和国内)の地方都市にありました。その修道院は科学の研究活動に積極的で(その背景は省略)、メンデルも科学研究や教育活動をおもな仕事にしていました。 そして彼は修道院長の後押しのもと、遺伝についての研究をはじめます。 修道院内の実験用の畑でエンドウ豆を交配し、育った豆の色やシワなどの形質について調べる研究。それを8年続け、結果を統計化すると、みごとな数量的法則性があることを発見したのです。 *** メンデルのその発見は、遺伝的形質を伝える因子(遺伝子)の存在を示す証拠とな

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  • 現代世界と似ている? ビザンツ帝国はどんな国だったか - そういちコラム

    「ビザンツ帝国」という国に関心があります。教科書ではマイナーな扱いですが、じつは世界史を理解するうえで重要な国です。これまでビザンツ研究の大家・井上浩一さんの著作(『ビザンツ 文明の継承と変容』京都大学学術出版会)を中心に、何冊かのを読んできました。 私がビザンツ帝国に興味をひかれるのは、そこに現代の世界(とくに先進国)と重なるものを感じるからです。とくに、その初期の200~300年間の頃(西暦600~700年代の頃まで)のあり方について、そう思います。井上教授も「現代世界のビザンツ化」ということを述べています。 ではビザンツ帝国とは、どんな国だったか。 *** ビザンツ帝国とは、ローマ帝国が300年代末に東西に分裂したあとの東半分をさします。そこで東ローマ帝国ともいう。なお、ローマ帝国の西半分(西ローマ)は、今の西ヨーロッパにあたる地域です。 首都はコンスタンティノープルという、今のイ

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  • 真似しよう、借用しよう。そして、そのことを隠さない - そういちコラム

    文章を書くなら、いいと思うものはどんどん真似しましょう。感動した言葉は、どんどん借りて使いましょう。どんなに真似したって、借りてきたって、あなたらしい個性は出てくるものです。良しにつけ悪しきにつけ、そうなのです。 そして、いろんな借用の組み合わせによって、オリジナリティのある何かが生まれるということも、多々あるわけです。 ただし、気をつけなくてはいけないことがあります。文章を書いて発表するときは、「真似や借用について隠さない」ということです。 他人の言葉や考えを「引用」するのはいいのです。一定の制約はありますが、原則的にはかまいません。 しかし、他人から借用しながら、それを隠して自分のオリジナルだと偽ったら、「盗作」です。 *** 創造とは、他人のつくりあげたものを受け継ぎ、それに新しい何かをつけ加えることです。新しいものを生み出すには、まず先人の仕事をふまえることです。 だから、「自分の

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  • 初心者のための、リベラルと保守、ポピュリズムの基礎知識 - そういちコラム

    リベラルと保守――両者は政治的な立場の代表的なものです。 リベラル(リベラリズム)とは、個人の自由を重視する立場。人は古い価値観や慣習から解放されるべきである。たとえば妊娠中絶、LGBTは生き方の自由に属することで、皆がしたいようにすべきと考える。移民に対しては開放的。移民・外国人も個人として尊重されなくてはならない。 そして、人びとの自由実現のため、政府は積極的に福祉を行うべきだとする。つまり「大きな政府」志向。また、軍事力を用いるよりも、話し合いによる国際協調を重視する。 アメリカの民主党(とくに左派)は、おおむねこれにあたるとされます。 以上をまとめて「リベラル」を定義すれば、つぎのようになるでしょう。 資主義を前提に、政府の積極的な関与によって社会問題を解決し、すべての人が自由に自分らしく生きる社会をめざす政治的立場 「資主義を前提に」とあるのは、「大きな政府」といっても、資

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  • 「論文入門」というより「学問全般への入門」・小熊英二『基礎からわかる論文の書き方』 - そういちコラム

    このあいだ小熊英二『基礎からわかる論文の書き方』(講談社現代新書、2022年)を読みました。 書の話をする前に、著者の小熊英二さん(1962~)について。それが書を語るうえで大事なのです。ご存じの方も再確認ということで。 *** 小熊さんは著名な社会学者で慶応義塾大学教授。東京大学の農学部を卒業後、岩波書店に数年勤務しましたが、東大の社会科学系の大学院に入りなおして博士号を取得。 大学院在学中に、修士論文を書籍化した『単一民族神話の起源』(1995年)が出版され、評判となる。 その後は博士論文にもとづく『〈日人〉の境界』(1998年)や、『〈民主〉と〈愛国〉』(2002年)、『1968(上・下)』(2009年)などを著す。これらの代表作はいずれも、近現代の日の社会・思想を扱った学術的な大著です。このほかにも、話題になったいくつもの著作がある。 それらの仕事は高い評価を得ていますが、

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  • 2300年前の学者が残した「1万ページ」の論文集・アリストテレス全集 - そういちコラム

    今週のお題「棚の中身」 下の写真は私の棚にある『アリストテレス全集』(全17巻、岩波書店、1968年~73年)。アリストテレス(前384~前322)は古代ギリシアの大哲学者。おおまかに2300年前の人。 この全集は今から30数年前、若いサラリーマンだった頃に古書店で買いました。全巻セットで6万円くらい。でも(もちろん)全部読んでいるわけではありません。パラパラめくったり、拾い読みをしただけです。 このを買った当時、私は月に100時間を超える残業をしていました。 今でいえばブラックな職場ですが、残業代はちゃんと出た。独身の私は自由に使えるお金がそれなりにあって、そのお金を、を好きなだけ買うことに使っていました(若い頃からが好きでした。おもに世界史・社会関係の)。 6万円の全集も、夜勤明けに昼間の古書店街をぶらついたときにみかけて、ぱっと買ったのです。あの頃は、経済的にも心理的にも

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  • 日本の少子化と、リスク回避志向=「損をしたくない」気持ち - そういちコラム

    先週、テレビのニュースや新聞では、6月3日に厚労省が発表した最新の出生率について報じていました(出生率=合計特殊出生率、1人の女性が生涯に産む子供の数)。 日経新聞(6月4日土曜日朝刊)の1面の記事にも、このことは出ていました。2021年の日出生率(合計特殊出生率)は1.30。これは、アメリカの1.66、フランスの1.83などと比べてかなり低い。子育て支援などの少子化対策で日は遅れをとっていると。 さらにこの記事では、日少子化対策は「ミスマッチも目立つ」と述べています。 つまり、90年代の「エンゼルプラン」のような仕事と子育ての両立を促進する政策は、“子どもを産んだ後の支援だった。前段階となる婚姻を促す若年層への経済支援は限定的だった”というのです。そもそも結婚・出産を促す政策が不十分だった、ということです。 そして「若い世代の雇用対策と経済支援が必要」「正規雇用でも賃金が不十分

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  • 「文化」を繁栄の基盤にした衰退期のベネチアに学ぼう - そういちコラム

    今の日にとって最重要の長期的課題は「これからの繁栄の基盤をどうするか」ということではないでしょうか? この数十年の日の繁栄の基盤は、「家電や自動車などの工業製品をつくり、輸出すること」でした。 しかし、この基盤は近年かなり揺らいでいます。中国などの新興の工業国の台頭や、IT化の進展などの環境変化が、その背景にあります。 日の「繁栄の基盤」について、これまで前提とされていたのは、従来からの「経済大国」路線を、時代にあわせて更新していくことでした。 つまり「最先端の技術でさまざまな産業を発展させて、世界との競争に勝ち抜く」という路線です。でも、それはもうむずかしくなってきている――そう感じている人も増えてきたのでは? *** そこで、ほかの選択肢を考えるうえで、世界史上に参考になる事例があります。 それは、衰退期のベネチア(ヴェネツィア)共和国です。ベネチアは、その長い歴史のなかで、環境

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  • 戦争という破壊がもたらした平等化 - そういちコラム

    歴史学者のウォルター・シャイデルによる、世界上のさまざまな「破壊がもたらした平等化」を扱った『暴力と不平等の人類史』(東洋経済新報社、2019年、原著2017年、鬼澤忍・塩原通緒訳)というがあります。 そのでは、アジア太平洋戦争による「平等化」に1章が割かれています。シャイデルによれば「日は、戦争由来の平等化の教科書的な事例」だそうです。 第ニ次世界大戦前夜の時代、日も欧米も、今の私たちの感覚では激しい格差社会でした。 経済史の研究者・森口千晶さんのレポート(『週刊エコノミスト』2014年8月12・19日合併号所収)によれば、1930年代(昭和戦前期)の日では「成人人口の上位1%」の限られた富裕層が、全国民の所得の2割ほどを得ていました。 そしてこの「1%」の戦前の富裕層の所得の約半分は、金融資産や不動産からの不労所得です。 しかしこの「1%シェア」は、2010年頃だと1割ほどに

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  • 多作な人は、多作だからこそ書くことが尽きない - そういちコラム

    文章の世界でたくさんの仕事をしている人を見ていると、「多作なのに書くことが尽きない」のではなく、「多作だからこそ、書くことが尽きないのだ」と思えます。 どの分野にも、寡作な人と多作な人がいます。学問の世界でも、めったに論文を書かないまま定年を迎える大学教授がいる一方で、百も二百も論文や著作を発表している学者がいます。 そして、かなりの場合、寡作な人よりも多作な人のほうが、ひとつひとつのアウトプットの質が高いのです。「量」の多い人は、「質」のほうも伴っているということです。 「やはりすごい人はちがうなあ」と言ってしまえば、それまでかもしれません。 でも、「その人がすごいから」というだけでなく、そこには「多作が多作を生む」というそれなりの構造があるように思えます。 *** 書くことによって、人は多くの情報にめぐり合うことができます。書くために調べものをするときには、いろんな問いかけを持って資料

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  • 命を縮めるほど精一杯だった・トキワ荘のマンガ家たち - そういちコラム

    画家や作家には、長寿の人の大勢います。でも、マンガの基礎をつくった巨匠には、長生きしなかった人が目立ちます。 亡くなった歳は、手塚治虫、60歳(1989年)。藤子・F・不二雄、62歳(96年)。石ノ森章太郎、60歳(98年)。赤塚不二夫、66歳で病に倒れ、6年間の入院の末、死去(2008年)。 この人たちはみな若いころに「トキワ荘」で暮らしたマンガ家です。そのなかには、先日(4月7日)88歳で亡くなった藤子不二雄Aさんのような比較的長生きの人もいます。 でも、トキワ荘出身のマンガ家には短命だったケースが、とくに活躍した人にやはり多いように思います。藤子Aさんも活躍した巨匠ですが、これは例外的ではないかと。 彼ら――トキワ荘のマンガ家たちは、20歳頃から、締切りに追われながら睡眠事の時間を削り、ひたすらアイデアを練って描くことを何十年も続けました。 例えば、ずっと前にNHKのドキュメンタ

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  • 戦争は何故なくならないのか - そういちコラム

    誰もが「平和は大切」というけど、戦争はなくなっていません。それは、さまざまな「正義」と戦争が結びついているからです。 たとえば「貧困や格差をなくす」といった、「平和」と同じくらい強力な正義があります。 革命は一般に内戦を伴います。革命とは、既存の「格差社会」をひっくり返すこと。格差のピラミッドの頂点にいる者たちをひきずりおろし、格差を是正しようとするのです。また、国際的なテロにかかわる勢力は、先進国と自分たちの間の格差に怒っています。 日中戦争(1937~45)や太平洋戦争(1941~45)の前夜、昭和戦前期の日は、はげしい格差社会でした。人口の上位1%にあたる高所得の富裕層が、全国民の所得の2割を占めていました(この「上位1%シェア」は今の日だと1割ほど)。 一方で、貧困に苦しむ大勢の人たちがいた。借金のカタに売られる農家の少女。農家の二男三男には受継ぐ田畑もなく、都会に出ても職はな

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  • 「ニセの人望」ではなく、自分に合う人望を求める - そういちコラム

    福沢諭吉の『学問のすゝめ』に、こんな意味の一節があります。 「人望はその人の備えている能力や人徳によるものだが、そうでないことも多い。それは、見かけだおしの宣伝だけで売れているインチキ商品みたいなものだ」 つまり、実際の能力などに基づかない「ニセの人望」がはびこっていると。そんな事例は昔も今も後を絶ちません。 この何年かでも、いくつか思い出します。「海外の一流大に留学」などと学歴詐称したタレント、「大発見」をねつ造した疑いの科学者、他人に曲をつくらせていた「天才作曲家」等々。スポーツでのドーピングを用いた勝利も、これに類するのでしょう。 世間を騒がせた事例でなくても、ネットをみていると「この人の言っている実績はほんとうなのか?」と疑わしくなることが時々あります。あるいは、いろんな細工をしてネットの検索順位を上げるということも、行われているらしい。インターネット社会は、「ニセの人望」がはびこ

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