「民族のために死んではいけない、絶対に生きなければならない」。父の思いを受け継いだ、一人の在日コリアンが、新しい二人の在日コリアンの生き方を記録する。 ひとりは日本代表として、もうひとりは北朝鮮代表としてピッチに立ったサッカー選手を追ったドキュメンタリー『祖国の選択〜2人の代表ストライカーの決断〜』。赤坂見附のカフェに現れたディレクターの姜成明(カン ソンミョン)は、今年30歳になるとは思えないくらい少年っぽさが残る人だった。(金瑞香・立教大学) ■存在を日本社会の中に潜めながら生きていくしかなかった 「まぁ、どうぞ、どうぞ」。座った瞬間から話が始まってしまい、手つかずになっていたコーヒーをさりげなく勧めてくれた。初対面とは思えないほど、くだけた口調で話す。 「在日コリアンって日本の社会でこんなに大変な目にあっているけど、一生懸命生きているんです、とか、そんなふうに偉そうな話をするつもりは