「お待たせしました」と言って出されたうどんを一口食べて、加藤智春さんはうなってしまった。まさか気仙沼でこんなうどんを食べられるとは思ってもみなかったのだ。 加藤さんは東京・石神井町にあるうどん店「エン座」の店主だ。エン座は全国のうどんマニアにその名を知られる人気店で、週末ともなると、加藤さんが打ったうどんを食べたいという人が地方から飛行機に乗ってやって来る。様々なうどんイベントを打ち出す加藤さんは、首都圏のうどん業界を盛り上げるリーダー的存在としても知られている。 東日本大震災から約1年が経った2012年3月、加藤さんは奥さんと小学生の息子を連れて宮城県気仙沼市を訪れた。将来はレスキュー隊員になることを夢見る息子が、被災地を見てみたいというのだ。被災地を訪れることが何らかの復興支援になるのではないかという加藤さん自身の思いもあった。 加藤さん一家は現地の観光ボランティアに案内してもらい、気